第43話 探検の限界
今日は、今から探検をしようと思う。
私が今いる場所は、自分の家だから、ここからスタートだ。
どこまで行けるか、今から楽しみだった。
まずは、家のどの場所から探検しようかと考える。
自分の家だから、毎日見慣れすぎて、探検という雰囲気ではないが、家の中でも、あまり行かない場所はどこだろうと考えてみる。
確か、物置のようになっている小部屋が、家の奥の方にあったはずだ。
母が、いつも何かをそこから取り出していたような気がする。
私は、その場所には普段行かないから、そこから探検することにした。
その小部屋まで行ってみると、扉があった。
もちろん、自分で、その扉を開けたことはないから、物凄くわくわくした。
扉をそっと開けてみると、中には色んな物が、たくさん置かれていて、思っていたよりも広かった。
中に入ってみると、普段は使わないような大きなお鍋や、昔使っていたようなじょうろが置かれていたり、何が入っているか分からないが、ビニール袋に入れられた物もあった。
私は、興味津々になり、小部屋にある色んな物をがさがさしながら触っていると、壁の一部分が黒くなっているのに気が付いた。
だが、たくさんの物が置かれているせいで、隠れて全部が見えないので、気になって、黒くなっている部分の周りに置かれている物を、全部移動してみようと思った。
結構な物が置いてあるので、全て移動させるのに時間がかかったが、それらを全部どけてみる。
すると、壁には三十センチ四方くらいの大きな穴があった。
私は、その穴を通った先が、どこに通じているのか知りたくなり、迷わずにその穴の中に入っていった。
穴を通って出た先は、どこかのオフィスのようだった。
みんな、手に書類を持ったりしながら、スーツ姿で忙しそうにしている。
ここは私にとっては、場違いな場所だと思い、さっそく次の穴を探すことにした。
しかし、廊下を歩いてみるが、なかなか穴が見当たらない。
やっと、ロッカーを置いてある場所の壁に、隙間を見つけたと思ったら、天井から床までの隙間の横幅が三センチほどしかなく、どう考えても通り抜けられそうになかった。
それに、その隙間を覗いてみると、向こうで働いている人が見えたので、この隙間は違うなと思った。
仕方なく、ロッカーを開けてみると、なんとそこに、また三十センチ四方くらいの穴があった。
思いがけないところにあるものだなと思いながら、今度はロッカーの中にある穴の中に入っていった。
そして、穴を出た先は、歯科医院だった。
何やら、向こうの方でキーンと治療をする音がしている。
私が出てきた場所は、関係者だけが出入りする部屋のようで、色んな医療機器が置いてあった。
患者さんがいる方へ出ていくと、驚かれてしまうだろうから、この部屋の中で穴を探すことにした。
勝手に医療機器を触ってはいけないので、慎重に見る角度を変えながら、穴がないか、壁を調べる。
しかし、穴はなかなか見つからない。
どうやら、穴は簡単に見つかるようなところには、ないらしい。
もう見つからないかと思って、ふと上を見上げると、穴があった。
しかし、今度は天上に穴が空いている。
どうやって、通ればいいだろう。
そう思って悩んでいると、壁際に段ボールが山積みになっているのを見て、ひらめいた。
これを階段状に積んで、上がっていけばいい。
我ながら、いい考えだと思った。
そして、段ボールを次々に積んでいく。
積み終わったころには、天井まで届くようになっていた。
歯科医院の人には申し訳ないが、段ボールを元の位置に戻せないので、このまま穴を通り抜けることにした。
次に出てきた場所は、図書館だった。
そこは、静かな空間で、とても広かった。
何となく、居心地がよかったので、しばらく本を見ながら過ごすことにした。
随分と昔に読んだことのある本が、何冊か並んでいるのを見ながら、懐かしんだ。
そして、そろそろ穴を探し出す。
だが、やはり、穴は簡単には見つからない。
床や壁や天井など、あらゆるところを探してみるのだが、穴らしき物は全くない。
穴を探して見つけるまでの時間が、どんどん長くなっているような気がする。
さすがに、もう見つからないかと思って、窓から外を眺めると、窓の外のバルコニーに、穴を発見した。
私は、端にあるドアからバルコニーに出て、穴へ向かった。
次の穴が、どんどん見つからないところにあるような気がするが、ためらわずに穴の中に入っていく。
出てきた先は、トイレだった。
何処のトイレかは知らないが、真ん中に通路があり、右と左に五つくらいトイレが並んでいた。
このトイレのどれか一つに、穴があるのではないか。
そう思って、私は一つずつトイレの中に入ってみる。
今までの経験から、全ての調べられるところは調べた。
しかし、穴は見つからず、調べていないトイレは残り一つとなった。
最後のトイレに入ってみると、今度は割と簡単に穴を見つけることができた。
だが、またしても、穴は天上にあり、このままでは届かなかった。
そのため、私は、用具入れに、天上まで届く物がないか探してみた。
すると、脚立が入っていた。
私は、それを穴の下まで持っていき、脚立を使って、穴を通ることにした。
やっとのことで、穴を通ると、そこは見渡す限りの草原となっていた。
その景色を見て、さすがにこれ以上は、穴は見つけられないと思った。
床も壁も天井もない。
雄大な自然が、そこには広がっていた。
ここが、探検の限界だと思ったが、私はここまで来れたことに、達成感を得た。
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