第38話 遅刻
私は、学校を遅刻したことは今まで一度もない。
いつも、目覚ましのアラームを七時に設定して、アラームが鳴れば必ず目を覚ます。
何度か、アラームが鳴った後に、もう一度寝てしまったことがあるが、そんな場合でも、たいてい五分ほどしたら頑張って起きていた。
それに、もし寝過ごしたとしても、母が起こしてくれるはずだから、学校を遅刻するなんて絶対にありえないと思っていた。
今日、この日が来るまでは・・・。
今日は、いつもより、たくさん寝れているような気がするな。
そんなことを、寝ぼけながら思い、私は何となく目が覚めた。
目覚ましのアラームも鳴っていないのに、目が覚めるなんて珍しいと感じながら、今何時だろうと思って、時計を見る。
すると、時計の針は七時四十五分を指していた。
一瞬、理解ができず、思考が止まってしまった。
どうやら、時計のアラームを設定するのを忘れてしまったらしい。
私が、学校に行くために起きなければいけない時間は、七時である。
そして、登校班の集合時間が、七時五十分だ。
何故、母は起こしてくれなかったのかと思ったが、どうやら母も寝過ごしたみたいで、まだ寝ていた。
私は、慌てて母を起こして、寝過ごしたことを伝えると、母もまた慌てていた。
今が、七時四十五分ということは、あと五分で支度をして、家を出なければならない。
それは、どう考えても絶対に無理だ。
いや、もしかしたら、さっと着替えてしまえば、間に合うのかもしれない。
しかし、今起きたばっかりで、思考も行動も素早くできない。
どうしようと戸惑っている間にも、時間は待ってはくれずに、進んでいく。
ただいまの時刻は、七時四十六分。
とりあえず、起きたばっかりで、トイレに行きたかった。
急いでトイレに行って、部屋に戻り、時計を見ると七時四十七分だった。
家の窓から、登校班の集合場所が見えるので、見てみると、私以外はもう全員が集合していた。
それを知ったことで、私はさらに慌てる。
そして、時間は七時四十八分になった。
今すぐ、集合場所に行きたい気分だったが、パジャマのままでは外に出られない。
私は、洋服タンスから、学校に着ていくための服を探して、取り出す。
時計を見ると、七時四十九分だ。
登校班の出発時間まで、あと一分しかない。
私は、急いで服を着替えた。
しかし、着替え終わった瞬間、自分の頭が寝ぐせだらけなことに気がついた。
このままでは、集合場所には行けない。
時間はとうとう、七時五十分になってしまった。
窓から、外を見ると、登校班のみんなは、学校に向かって歩いていくところだった。
髪型を気にしなければ、走って間に合うかもしれないが、やはり、このままでは恥ずかしい。
登校班の集合に間に合わなかったことで、私はがっかりしたが、ここで頭を切り替えることにした。
学校が始まるのは、八時三十分だ。
家から学校までは、歩いて十分程度だから、要するに最低でも、八時二十分までに家を出たらいいということだ。
今が、七時五十一分だから、八時二十分までには、まだ三十分ほど時間がある。
そう考えたら、少し冷静になることができた。
本来なら、これから髪を整えて、すぐにでも家を出たほうがいいに決まっているのだが、私は、起きてから何も食べておらず、お腹がとても空いていたため、何か少しでも食べてから、学校に行こうと思った。
時間を気にしながら、母が用意してくれたトーストをさっと食べて、歯も磨いた。
そして、寝ぐせのついた髪を整える。
その時点で、時計は八時十分だった。
登校班の集合に、間に合わなかったことも初めてだったのに、そこからやけに冷静に、時計を見ながら行動できた。
あまり、ぎりぎりの時間に家を出るのも焦ってよくないため、八時十五分には、ランドセルを背負って家を出ようとした。
すると、突然大きな雷が鳴って、大雨が降りだした。
私は、雷が大嫌いだったので、登校班のみんなで学校へ行くのならまだしも、一人でこの大雨の中、雷を気にしながら、学校へ行くなんて絶対に無理だと思った。
しかし、さすがに家を出ないと、もう八時十五分を過ぎようとしている。
私は、ぎりぎりの八時二十分ごろまで待って、雨と雷が収まらないか、様子を見ることにした。
だが、天気は一向に良くなる気配がない。
さすがに、もう学校に行かないと、本当に遅刻してしまう。
もしかしたら、この悪い天気の中、傘をさして歩いて行けば、歩く速度が落ちるため、今から出ても間に合わないかもしれない。
色んなことを考えながら、私は覚悟を決めて、家を出て学校へ行くことにした。
間に合うのか分からないが、今まで学校に遅刻したことのない私は、絶対に間に合ってみせるという気合いで、嫌いな雷が鳴る天気の中、頑張って歩いた。
学校までは、十分程度なはずなのに、その時間がとても長く感じられ、一刻も早く学校に着きたい気分だった。
すると、歩いている途中、物凄く大きな雷が鳴って、目の前が光り、真っ白になった。
そして、私はそこで目が覚めた。
結局、夢の中で、学校に到着できなかった私は、遅刻したのか、間に合ったのか、分からずじまいとなってしまった。
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