第35話 街中のパン屋さん

 今日の私は、友達の家に遊びに行こうと思い立って、バスに乗っているわけだが、正直、今どこを走っているのか全然分かっていない。

 どうやら、乗るバスを間違えたみたいだ。

 バスが、いくら進んでも、私の知っている景色に近づくことはなかった。


 このまま、先に進んでも遠くへ行ってしまうだけだと思い、私はバスを降りることにした。

 降りて、周りを見渡してみると、閑静な住宅街といった感じだった。

 緑が多く、道路も広くてきれいだった。

 私は、遊びに行こうと思っていた友達に電話をかけて、自分の居場所を伝えようと思ったが、周りは住宅街で目印になるものがなかったため、しばらく歩いてみようと思った。


 きれいな住宅街なので、歩いているだけでも、楽しい気分になった。

 何も考えずに、道なりに歩いていると、少しずつ歩いている人や車が多くなってきた。

 先を見てみると、どうやら、住宅街の中に、お店がいくつかあるらしい。

 それほど、店舗数は多くはなさそうだったが、どのお店も住宅街の雰囲気に合わせて、お洒落な感じがした。


 その中でも、ひと際目を引いたのが、人がたくさん並んでいるパン屋さんだった。

 お店の外には、十人以上の人が列に並んでいた。

 近づいてみて、外から中を覗いてみても、店内には何人もの人がいた。

 それに、お店の外にまで、パンのいい香りが漂ってきた。

 店内には、焼きたてのパンが、たくさんあるんだろうなと思うと、私も食べたくなってきた。


 そして、パン屋さんの列に並ぼうと思い、列の後ろの方を見ると、ちょうどその辺りにバス停があった。

 そこで、私は、今日出かけた目的を思い出す。

 私は、今日、友達の家に遊びに行こうと思っていたのだ。

 しかも、私は今、自分がどこにいるのかも分かっていない状況だった。


 私は、パン屋さんの列に並ぶ前に、友達に電話をかけておこうと思った。

 そして、友達と電話がつながると、バス停の名前とパン屋さんのお店の名前を、友達に伝えた。

 すると、友達は、私がいる場所がどこなのか、すぐに分かったらしい。

 今、私がいるこの場所は、友達の家から大分離れているらしいが、私の目の前にあるパン屋さんは、かなり人気のあるお店だということで、友達もよく列に並んで買いに来るということだった。

 また、運のいいことに、パン屋さんの前のバス停から、友達の家の近くのバス停まで、一本で行けるということだった。

 そこで、私は、友達の分のパンも買って、このバス停からバスに乗って、友達の家まで遊びに行くことにした。


 友達と電話を切ると、私はパン屋さんの列の最後尾に並んだ。

 これだけの人数が並んでいると、なかなか店内に入るのに、時間がかかりそうだったが、人気のパン屋さんと聞いたので、諦めず気長に待つことにした。


 みんな、店内でじっくりパンを選んでいるのか、なかなか列が前に進まない。

 待っている間も、パンのいい匂いがしてくる。

 私は、その匂いを嗅ぎながら、どんな種類のパンが売っているんだろうと想像を膨らませた。


 その後、数十分ほど列に並んで、やっとのことで、店内に入ることができた。

 店内は、外にいた時よりも、焼きたてのパンのいい匂いがした。

 どんな種類のパンが売っているのだろうと、棚を見てみると、食パンや蒸しパンやロールパンなどのシンプルなパンから、カレーパンや焼きそばパンやウインナーパンなどの総菜パン、メロンパンやクリームパンやあんパンなどの菓子パンなど、とても多くの種類のパンがトレイの上に、美味しそうに並んでいた。


 しかし、私が驚いたのは、パンの種類が多いこともそうだが、なんといっても、そのパンが並んでいるトレイが、天井近くの高さまである棚に、何段も並べられていることだった。

 背の届く範囲のパンは、取ることができるのだが、あんな天井近くにあるトレイのパンは、一体どうやって取るのだろうと疑問に思った。

 よく、書店や服屋さんで、物凄く上に陳列されている商品を、隅の方に置いてある脚立を使って取ることがあるが、このパン屋さんの店内に、脚立のようなものは見当たらない。

 何か、仕掛けがあって、上のパンが取れるようになっているのかと、周りの人を見てみるが、周りの人も背の届く範囲のパンしか、取っていない。


 それと、もう一つ、驚いたことがあった。

 パンの売り切れる早さが、物凄く早く、さっきまでそこにあったパンが、もうなくなっていた。

 しかも、パンが売り切れると、すぐに違う種類のパンが補充されていた。

 さすがに、人気のあるパン屋さんだけあるなと思ったが、この早さはちょっと信じられなかった。


 私は、食べたいパンがなくなってしまわないように、自分の持っているトレイに素早くパンをのせていった。

 背の届かない高さにあるパンも気になったのだが、取れないため、諦めることにした。

 そして、チョコマーブルパンと、たまごサンドと、紅茶メロンパンと、クロワッサンと、ふわふわの白パンを買った。

 友達と食べるため、少し多めに買ったが、それでもまだ気になるパンはたくさんあった。


 パンを買って、お店から出ると、ちょうどバスが到着したところだった。

 私は、慌ててそのバスに乗った。

 これだけ、色んな種類のパンを買ったら、友達もきっと喜んでくれるだろう。

 そう思って、パンを食べることを楽しみにしながら、友達の家に向かうのであった。

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