第33話 トイレがない
今日は、家族でショッピングモールに来ていた。
といっても、いつも行き慣れている自宅近くのショッピングモールではなく、車で数十分かかる、少し遠くのショッピングモールまで来ていた。
ここには、あまり来たことがなかったのだが、たまには違う場所にも遊びに行ってみようということでやってきた。
ここのショッピングモールは、自宅近くにあるショッピングモールとは違って、かなり広く、まだ数回しか来たことがなかったため、どこに何のお店があるのか、全く把握できていなかった。
しかし、それが逆に新鮮で、いろんなお店を見つけては中に入ったりして、色々見て回るのが楽しかった。
そして、全体的に広くて店舗数も多かったが、ゲームコーナーもとても広かった。
これには、家族でテンションが上がってしまい、しばらくはここで遊ぶことにした。
ぬいぐるみやお菓子をつかむゲームや、コインゲームなどたくさんの種類のゲームがあり、ゲームコーナーはとても賑やかだった。
私は、数十分、お菓子をつかむゲームを真剣にやってみたが、不器用なため、全くつかむことができなかった。
それでも、結構楽しめたので、お菓子がつかめなかったことを、気にしないことにした。
ゲームコーナーで遊んだ後も、広い店内をぶらぶらと歩いていると、次は、ペットショップコーナーを見つけた。
可愛い子猫や子犬が、たくさんいて、見ているだけで心が癒された。
また、ハムスターやウサギやフェレットなどもいて、ペットショップはちょっとした小さな動物園のように思えた。
その後も、ショッピングモールを歩き回っていると、ふと子供がトイレに行きたいと言った。
私も、子供と一緒にトイレに行っておこうと思い、子供とトイレを探すことにした。
しかし、広すぎるため、なかなかトイレの案内表示が見つからなかった。
トイレを探して、うろうろと歩いていると、トイレの入り口らしきところを見つけた。
中に入ると、さすが広いショッピングモールのトイレのためか、何十個もトイレが並んでいた。
だが、よく見ると、どれも全部子供用のトイレだった。
とりあえず、子供はそこでトイレに行くことができたのだが、大人用のトイレがなかったため、私は大人用のトイレが一つでもないか、探した。
しかし、どれだけ探しても大人用のトイレが見当たらなかった。
全部、子供用のトイレで、ドアが小さいため、中が見えてしまうのである。
これじゃあ、私は絶対に入れない。
私は、別の場所の大人用のトイレを探すため、家族とは別行動をすることになった。
しばらく、探してみるものの、なかなか見つからない。
階段を上ったところに、トイレらしきものが目に入ったので、そこへ入ってみた。
すると、そこは、お洒落なパウダールームになっていた。
たいてい、女性のトイレにパウダールームが併設されていることが多いから、きっと、奥がトイレになっているのだろうと思い、奥まで歩いてみる。
しかし、行き止まりまで歩いてみても、トイレはなかった。
私は、パウダールームのすぐ近くに、きっとトイレもあるはずだと思い、その部屋を出て、付近を探し出した。
だが、どれだけ探しても、トイレがない。
こんなに探しても、トイレはないものなのか。
私は、疑問に思いながらも、また別の場所のトイレを探し始めた。
どれだけ、歩いただろうか。
さすがに、建物の中と言えども、これだけ歩けば疲れてしまう。
私がトイレを探すのを諦めかけていたその時、やっとのことでトイレの案内表示を見つけることができた。
次は、入り口に、きちんとトイレのマークを確認して中へ入る。
そこは、やっと私が探し求めたトイレであった。
しかし、困ったことに、トイレの前には、人が大勢並んでいた。
やはり、ショッピングモール内のトイレが少なすぎて、混むのではないのか・・・。
そうは思ったが、やっと見つけたトイレなので、気長に待つことにした。
トイレの列に並んでいたのだが、何かが不自然なことに気が付いた。
普通、トイレの列というのは、一列に並んで待つものだと思うのだが、ここのトイレは広すぎるせいか、一つずつのトイレに一列ずつの列ができていた。
まるで、スーパーの各レジに、各列ができるような、そんな感じになっていたのである。
そのため、列によって、進むのが早い列と遅い列があり、差があった。
私が、偶然並んだ一番奥の列は、進むのがとても遅く、なかなかトイレの順番が回ってこなかった。
私が待っている間にも、他の列はどんどん前に進んでいく。
それでも、根気強く順番が回ってくるのを待ち、とうとう次が自分の番になった。
しかし、ここからが全く進まなかった。
次が自分の番だというのに、何分待っても、トイレから人が出てこない。
私は、違う列に並び直そうかと本気で考えた。
だが、もし並び直したところで、待っていたトイレから人が出てきたら、私の努力が無駄になる。
そう思うと、なかなか並び直すことができなかった。
そんな葛藤から数分が経つが、やはりトイレから人が出てこない。
私は、意を決して、隣の列に並び直すことにした。
そして、隣の列の一番後ろに並び直した、まさにその瞬間、今まで並んでいた列のトイレのドアが開いた。
私は、あまりの残念な思いに、目が覚めた。
私の努力は、無駄に終わったのである。
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