夏祭り

夏祭り当日を迎え、俺は少し早く春樹と百桃に呼び出されていた。


「水原くん、あれから少し吹っ切れたように見えるけど、何かあったのかい?」


春樹には何も隠せないなと思い、俺は柚葉に対する気持ちとこれからの決意を二人に告げ、誓った。


「俺は、もう一度柚葉と真剣に向き合いたいんだ!もう、二度と柚葉を泣かせない!柚葉が俺を思っていてくれた分、過去は取り返せなくてもこれから思い出を作っていきたいと思う!もう、逃げない!」


俺の決意に対し、百桃は一言だけ呟き、集合場所へ先を急ぐ。


「ふーん、まあ万一柚を泣かせる事があったらタダじゃ済まないから。覚悟しといてよね」


俺は心に誓った。


"もう逃げない" "もう離さない"


春樹は俺の肩に手を置き、「頑張れ!応援してる」と、そう言って百桃の後を俺と追いかける。


... ... ... ...


目的地の駅に着き、奥から柚葉が歩いてくるのが丁度見え、四人が揃い祭の会場へ足を運ぶ。


「花火、綺麗だね」


柚葉は空を仰ぐなり見惚れるとうにただ打ち上がる花火に釘付けになっていた。


「ああ、綺麗だな...花火」


一眼レフのカメラを持ち上げ、打ち上げられる花火にピントを合わせる。


夢中になって花火を撮影する柚葉を見て、いても立っても居られなくなった俺は花火の音に掻き消されるか、ギリギリ聞こえるか微妙な大きさの声で声を掛ける。


「瀬良さん、カメラ好きなんですね」


柚葉は微かに聞こえたのか、首を傾げるなり俺に問いかける。


「水原くん、何か言った?」


俺は少し恥ずかしくなり、少しの沈黙の末もう一度質問する。


「カメラ、よく撮るんですか?」


柚葉は目を輝かせ、それはもう楽しそうに話してくれた。


記憶を失ってから写真を撮るようになり、その楽しさと綺麗なものを撮った時の喜びの全てを教えてくれた。


「実は俺、中学の時付き合ってた女の子が居てさ。もう長い事その子に会えてなかったんだ。それから最近再会出来たんだけど、何を話したらいいか分からないんだ。どうしたら良いかな?」


直接本人に聞く勇気の無い俺は、柚葉に遠回しに質問を投げかけた。


「その子は、水原くんにとってどんな人だったのかな?」


俺は柚葉のその言葉を何度もリピートさそ、俺にとって柚葉がどういう存在で、当時の気持ちと今の気持ちの変化を理解し落としこむよう務めた。


「俺は...彼女と離れていた時間を、空白をこれから沢山の思い出を作る事で、少しでも埋めれたらと思うんだ。いつか彼女に会えたら、伝えるんだ」


俺は少し複雑な気持ちを抱きながらも、柚葉の顔から目を逸らし、下を向きながらではあったが勇気を出して精一杯の決意表明をした。

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