第11話 ラウルのアジト

 三人は石英を手にしてクラウディアの自宅に戻った。

「結局はクラウスが必要なのね、わたしは石英の謎は今まで解けなかったけど、まさかそんな仕組みになっているとは思いもしなかったわ」

「お母さん、初めからクラウスを動かせばよかったね」

「そうね、でもモーリスがクラウスを隠している場所をわたしも知らなかったからね」

「ポールの倉庫は誰にも知られない場所だったって事? だからラウル達も見つける事ができなかったんだね」

「ラウル達がわたしにいくら聞いても、知る訳ないから」

「でも、お父さんは何故クラウスを隠していたの? ラウル達に見つからないようになのかな、それともお母さんに取られたくなかったとか」

「それはどうしてでしょうね、今度会ったら聞いてみたら?」

「お父さんって、今何処にいるの?」

「知らないわ、モーリスはもうわたしに関係ないもの」

「お母さん! いくら別れているからって……」

 そばで太陽の光に石英をかざしていたマッキーとシュナジーは、ハーネスとクラウディアの会話を聞いていた。

「マッキー達はお父さんと会った時、何処にいたの?」

「何処だったかな、ウォータモルンは間違いない、ただクラウスを走らせていただけで、後ろについて来た」

「そうだったよな、ラウルと勘違いしたっけ?」

「モーリスはたぶんウォータモルンにいるはずだよ。クラウスの倉庫もレース会場もここの街にあるからね。そこでクラウスを見かけてついてきたんじゃない?」

「お父さんはこの町にいるの? 今まで見た事なかった。それにこの間は銃を持っていたわ」

「えっ? 銃をか! この街で銃を持っている人はなかなかいないぜ」

「でも、悪い人には見えなかったけど……」

「持っているのは悪いわけではないけどさ、それでも物騒だな」

「とにかく先にクラウスをラウルから取り戻さなければならないわね」

「そうだね、でも俺達が取り返す手段は思いつかないよ……」

「何を諦めているのよ、それは今から考えて行く事じゃないの!」

「ハーネスはいつも前向きだよな」

 四人は石英を見ていた。

 外を流れる雲は時間が過ぎて行くのを感じ取れた。また遠くの方には大きな雲が高くのぼっている。

「わかったわ、わたしが石英を持ってラウルに交渉しに行くわ」

「ハーネス! やめてくれよ、それに交渉って言ったって、どうするの?」

「ラウルは何か隠しているはず。この石英を持っていけば、何か話すかもしれないわ」

「でも失敗すると今度こそ殺されるかもしれないぜ、危ない」

「大丈夫だわよ、この石英に模様が映る事はまだ知らないはずだわ。石英をどういう形で使っていいのかすら分からないと思うの」

「それを教えるのか?」

「教えないわ。でも私達も分からない事が沢山あるわ。少しでもラウルの情報を知った方がいいと思うの、ラウルは何を企んでいるのか探ってみないと」

「でも、ラウルは絶対教えないと思うぜ。とくにハーネスやクラウディアにはな」

 ハーネスは少し考えると、マッキー達の方を見た。

「良い考えがあるわ。あなた達に探って来てもらえばいいわ」

「えっ? 俺達がか?」

「囮になってもらうわ」

「囮作戦ってやつか?」

「石英を持って、それで見つけたと言って近づくの。二人なら警戒も浅く気を許して話すかもしれないわ、大丈夫よね」

「大丈夫って、全く大丈夫じゃないし。それに石英は持って行かれてもいいのか?」

「仮に水晶玉を石英と見立ててラウルに渡すのもいいけど、どうせなら、その石英をどう使うか知りたいわ」

「あーん、わかったよ、やってみるか!」

「やってみようか、シュナジー」

「二人ともそう来なくっちゃ!」

「それでは早速ラウルのアジトを調べ上げるわね」

「分かるのか?」

「分かるわよね、お母さん!」

「場所は確実なものではないけど、あのクラウスの車にあなた達が水を注入したので、それから常に高エネルギー反応が出ているの。それを機械で探っていけばクラウスの場所が特定できる。そのクラウスがラウルの所にあるのは間違いないわ」



「ここなのね、なんだか薄暗い地域だわ」

 ラウルの組織がある本拠地は、ウォータモルンの東、隣町のネーヴと言う所にあった。本拠地といっても古い建物が並ぶ所に紛れてあまり目立たない。ビルも壁のタイルがはがれ落ちていて、雨で錆びた色がコンクリートについている部分がむき出しだった。ここもあまり治安はよくない事からすると、ウォータモルンはかなり住みやすい町である事は間違いない事が分かる。そんな場所でラウル組織は活動している。

「ラウル達は何故こんな所に拠点を置いているのですか?」

「どうしてでしょうね。あまり目立たなくする為なのか、何かに都合のいい場所かもしれないわね」

「あ、誰か出て来る!」

「ラウル組織の子分だ」

「何か慌てているようだな、俺達に気づいたのか?」

「でも、黒い車で何処かに行ってしまうわ」

「いなくなったぞ、行ってみようかマッキー」

「うん、緊張するな。大丈夫かな」

「わたし達がここで見守っているから大丈夫だよ、いってらっしゃい」

「見守るだけかよ、ハーネス」

 マッキーとシュナジーは石英を慎重に箱の中に入れて、ビルへ向かった。

「見つかるか?」

「見つけられる為に行くんだよね」

「あっ、そうか」

 緊張した二人は暗いビルの中へ恐る恐る入って行くと、ラウルの子分がクラウスの横に立っていた。

「あっ、クラウスがここにあるぜ!」

 ビルの入り口にクラウスは無造作に置かれてあった。

「お前達は何者だ! 何しに入ってきた」

「俺達は貴重な物を持ってきた。ラウルに会わせてくれ」

「ラウルだと? 気安く呼ぶな」

「僕達は、あなた達が探している物を持っている」

「それは何だ? 見せてみろ」

「この場では出せないさ。知っているだろう、石英という玉だぜ」

「石英をか! よし待っていろ」

 子分は他の者に二人の見張りを指示して、階段を上っていった。交代した男がマッキー達に言う。

「どうしてお前達はここに来た? わざわざ大切な物を持って」

「僕達は、石英とクラウスの存在する本当の意味を知らないんです。ラウルはその本当の謎を知っていると聞いたので」

「確かに、我らもクラウスの謎を追っている。この車も、石英も必要だった。しかし今はそれどころではない」

「どう言う事ですか?」

「新しい手がかりが見つかったのだ、ラウル殿が確認した」

「えっ、それは何ですか?」

「お前達はその石英を持ってきて、情報を聞きに来たかもしれないが、もうその石英はほぼ必要ない。それにラウル殿はお前達には話さないよ」

「もう石英は必要ないと言う事は、モーリスが言っていた場所が見つかったって事ですか?」

 男は黙っていた。

「マッキー、さっきの組織の動きからして、嘘ではないようだな。俺達は少し遅かった」

 他の者に指示を出しながら階段を下りてきたのはラウルだった。黒いスーツに部屋の中にも関わらず青いサングラス、背は思ったよりも高くはなかった。マッキー達はラウルと言う人をまじまじと目にしたのは初めてで、もっと怖い感じの人かと思っていた。

「この人がラウル」

「なんと、君達がクラウスを直して動かした小僧らだな。この場所がよくわかったな、お前達もクラウスの謎を探っているのか? 悪い事は言わん、怪我しないうちに手を引くのだな」

「クラウスの来た本来の場所を知っているのですね。僕達はその場所を知らないまま帰られないのです」

「我々に何をくれても駄目だ。わかったなら帰るのだ」

「まだ、その場所は今も存在しているのですね」

「お前らはグランドベースの存在そのものの意味をわかっていないだろう、分かるはずがないよな」

「グランドベース? それは何ですか、意味とはどういう事?」

「君達は知る必要がない、石英はもらって欲しいなら譲り受けるが、今はそれがあってもどうにもならない」

 二人は石英を見ていた。

 その時、急にラウルの子分が入ってきて、ラウルに耳打ちをした。

「なんと、そうなのか? そしてどうなった」

「全滅し、たどり着ける機体はありませんでした」

 ラウルは顔色を変え、石英をかかえる二人をもう一度見て言った。

「よし、お前達と取り引きしよう。外にいるクラウディアとハーネスをここへ呼び寄せろ。話がある」

「わかっていたのですか」

「私は常に情報を逃さない」

「僕達に何をどうしろと言うのですか?」

「まあ、今から話すよ。とにかくつれてこい」

 二人は外に出てハーネス達を呼びに行った。

「どうしたのマッキー、石英を持って行かれたの?」

「いや違うよ、石英はここにまだある。しかしハーネス達がいる事はバレていて、つれて来るように言われたんだ」

「えっ、私達は包囲されているの? まずいわね」

「そんなんじゃない、ラウル本人から重要な話があるみたいだったよ」

 クラウディアが言った。

「ついにラウルが口を開いたわね」

 クラウディアとハーネスも合わせて四人、ラウルの本拠地に呼ばれた。

「結局はこうだ、我々に協力してくれればいいのだよ」

「ラウル、その協力とはどういう事かしらね」

「それは、あの時と同じ、クラウディアも覚えているだろう」

「いつの事をいっているのか分からないし、意味が分からないわ」

「あの時、クラウスの実験で車体を動かしたのは大きな電流を流したときの電気信号だ。それともう一つ、クラウスが反応した実験があっただろ」

「もしかして、あの時の実験をもう一度実行しろと言うのじゃないでしょうね」

「そうだ、ハーネスだ。今この車にはハーネスが必要な事がわかった、あの時の実験が今、まさに役にたつ時が来たのだ」

「駄目よ、ハーネスは絶対乗せないわ」

 その時後ろに男が立っていた。

「ラウルよ、貴様、あの時のグランドベースを話していないのに何故わかったのだ?」

「なんとモーリス! いつからそこにいた!」

「あっ、お父さんだわ!」

 モーリスは建物の陰からずっとラウル達の話を聞いていた。

「お前がグランドベースに乗り込むのは不可能だ。あの物体からは何らかの電磁波が出ていて、近くを通過する船や飛行物体は進路を狂わせ墜落する。私の乗っていた客船が沈没したのも実はグランドベースから放射する電磁波が原因だと後からわかった」

「あなた、何を言っているの? それとハーネスは何も関係ない」

「我々の組織は、ある老婆にグランドベースへ行ったという話を聞いた。その老婆はすぐに死んでしまったが、どうにか死ぬ前にグランドベースの謎を聞き出す事ができた。モーリスもグランドベースの謎をわかっていたのならどうして興味を持たなかった? モーリスなら必ず調べるはずだろ」

「調べたさ、しかし調べれば調べるほど謎は深まるばかり。クラウスの水で走るエンジンもその一台が成功したものの、エンジン本体の開発には至らず、水で走るエンジンを発明できない」

「失望し解散したのか、つまらんな」

「グランドべースについて調べるのは時間の無駄だ。計りしれないものを追っている事に疲れた」

「今からでも間に合うよ、モーリス」

「ラウル、グランドベースに乗り込むのは容易ではない。もはやハーネスが乗るクラウスだけがグランドベースにたどり着く事ができるのだ。やりたけりゃやってみるがいい」

「モーリス! あなた何を言っているの、またあの時のようにハーネスを危険にさらす気なの? あの時と何も変わってないのね、絶対に乗せないから」

「お母さん、わたし乗るわ!」

「ハーネス! あなた何を!」

「大丈夫よ、お母さんだってこの車の謎を知りたがっていたじゃない」

「だけど、ハーネスを危険にさらすわけにはいかないわ」

「別に死にに行くわけじゃないし、あの時のように赤ん坊でもないわ」

「よし決まりだ。モーリスも了承している事だし、我々に協力してもらおう」

 そのやりとりをじっとマッキーが聞いていた。

「その話ちょっと待って!」

「どうしたのかマッキー」

「クラウスには僕が乗る!」

「何でマッキーが乗るの? 意味がないだろ」

「シュナジー、クラウスは暴走すると、ある方向へ向かう習性がある、ハーネスが赤ん坊だった時の実験をラウルは言っている」

「いかにも、我々の言うのはその通りだ、クラウスを動かせる部類の人間を乗せ、なおかつ石英を搭載するとグランドベースへ導くと言う事だ、だが何故お前のような小僧が乗るのだ?」

「俺にも前に同じような事があったよねシュナジー」

「あれはマッキーが運転してクラウスが反応したって事か?」

「そうだよ、たぶん何処かで会ったおじいさんやハーネスにしてもクラウスが反応する部類の人間が他にも多くいるんだよ、なら俺もその部類の人間のはず」

「そうなのか? なら俺が運転してる時は何もならないから違うのか」

「だから俺が乗るよ、ハーネスに乗せるのはその後からでも遅くはない」



 マッキーはクラウスの運転席に乗り込んでシュナジーはその横に座った。

 マッキーの乗ったクラウスを囲むようにラウルの大型車両とクラウディアの車、モーリスの車で固めてある。ラウルはクラウスが暴走するのを恐れ、クラウスには乗らなかった。その代わりに逃げる事のないようにクラウスに起爆装置を取り付けたように言った。

「ラウル殿、準備は整いました」

「よし、ついに実験開始だ。この時がやっと来た」

石英はフロントガラスに写り込むダッシュボードの中央へ固定するとレンズに地図のようなものが映る

「これでクラウスは石英に誘導されて、マッキーを認識し、グランドベースまで走る事ができるのか?」

「俺がその部類の人間だとすればね、このまま導かれるだろう」

「そうか、ならついにグランドベースが見られて謎が解けるな」

「そうだよシュナジー。でも大丈夫? 本当は俺一人でもいいんだ」

「何だ、自分だけが世紀の発見をするって事か!」

「違うよ! 前に暴走したときの事忘れたの? あの時はブレーキが利かないだけと思っていたけど、結局車は制御不能の暴走車だった、クラウスは謎で危険だし、それに今は逃げないようにラウルの起爆装置が取り付けられている」

「それで俺を危険な道に行かせられないと言う事か」

「運良くグランドベースにたどり着いても戻れるか分からないよ」

「その時はその時さ」

「シュナジー、どうなっても知らないよ」

 マッキーはゆっくりクラウスを走らせる。すると自動で車は加速していき、他の三台も離れる事なく付いて行く。クラウスは森の中の方へ向かった。

皆はグランドベースの場所を知らないがラウル達はわかっていた

「やっぱりそうだな、我々は間違ってはいなかった、方向は合っている」

 マッキーとシュナジーは初めてクラウスに乗った時と同じように緊張していた。

「マッキー、車は何処に向かっているのか? モーリスが言っていたグランドベースは何処かの海の上に浮いているとか言ったけど、海とは方向が違うな」

「そうだよね、何処まで走るんだろ、すごい勢いで山の中に入って行くよ」

 クラウスは迷う事なく一定の方向を目指し、道なき道を走る。ついて来る他の三台は必死だ。

「ねえお母さん、何処まで走るの? 全く分らないわ」

「そうだね、お母さんにも分らないわ。このままついて行くしかないわね」

「わたしが赤ちゃんの時もこんな感じに走ったの?」

「全く違うわ、あの時は飛び出すようなものすごい勢いだったわ。あの事は忘れないわね」

「なら、石英が抑制してコントロールしているという事なの?」

「どういう仕組みになっているのか分らないけど、石英が導いているのは間違いないみたいだわね」

 ラウル達も、クラウスがどうやって島へ乗り込むのか、興味津々だ。見逃す事は許されない、どうやっても島へ侵入する方法を見抜かなければならない。ラウル本人にも緊張が走る。

 クラウスは森を抜けると大きな通りに出た。

「シュナジー、ここの通り気づかない?」

「ここ通った事あるな。この先に黒い石があって、地下にある麦をチェが刈り取っていたよな」

 クラウスは黒い角石の方向へ走る。その速度は速く、モーリス達が離されて行く。

「そうだ、この先だった。その地下を入って行くわけじゃないよね?」

「まさか、かなり狭い所だったぞ。あっ、速過ぎて他の皆がついて来られていないな!」

クラウスはクラウディアやモーリス、ラウルまで付いて行けない速度で走る。道が悪く車体が悲鳴をあげていた。

「あの車はなんて道を進むのだ、我々も遅れるな!」

「ラウル殿、もう車の限界です、このまま追い続けるのは不可能です」

「なんと! 限界まで追い続けるのだ」

「はい!」

 クラウスは他の車を突き放し、チェの通っていた黒い角石の横を通過して森を抜けた。すると二人の目の前に巨大な島が出現した。

 二人はグランドベースを初めて目の当たりにした。

「なんだこの島は、浮いているぜ! なあマッキー」

「シュナジーごめん! 必ず戻って来る」

 マッキーは急にドアを開け、シュナジーを突き飛ばすとシュナジーはクラウスから落ちた。

「なにするんだよマッキー! あいてて!」

「シュナジーは家族がいる。しかし俺は一人だ。だから俺だけで十分だし、シュナジーまで危険にさらす気はない。すまない」

 クラウスは浮いた島の方へ進むが、島の真下は酸性の水たまりが広がっていて、車はこの先に進むのが不可能な状態だ。

「なんて大きな島なんだ、一体誰が造ったんだろう。この車は島までどうやって上陸するんだろうか? このままでは進めないよ。いくらクラウスの車体でも酸の水で溶けてしまうだろう」

 そうしているうちに、シュナジーが降ろされた所に他の三台が追いついた。

 ラウルは慌てて、疑った目をしながらシュナジーを見た。

「お前どうした、車が止まったのか?」

「いや、違う、マッキーに付き落とされたのさ」

「落とされた? 嘘をつけ! どうしてなのだ」

「俺も分らない」

 シュナジーは自分が落とされるし、ラウルに疑われるし、何も言う事がない状態でお手上げだった。

「あいつはグランドベースを知っていたのか?」

「マッキーは知らないと思うけどな、今は一人であそこを走っているぜ」

 もう遠くまで離れてしまっていたクラウスをシュナジーがゆびさし、ラウルは目の前に浮く巨大な島の方向へ走るマッキーを見た。

ラウル以外は浮いた島の大きさに驚いていた。特にモーリスは前に見た島が本当に存在していた事に感動していた。

「あの時の島だ。二十二年前に海面から見た物と同じだ。その時は霧に隠れて見えなかったが間違いない」

「モーリスが前に話をした島ってこの事だったのね。グリース研究所の時代はあなたの言っている事が全く想像つかなくて、嘘つき呼ばわりしたわね。本当に浮いているとは思いもしなかったわ」

「二十二年目にしてやっと信用されたのか。しかしあれからどうやって海上にあったものをこの山の上まで運んだのだろう」

 ハーネスはマッキーを乗せたまま進んでいる車を探すが巨大な島の威圧感で目の遠近感がおかしくなっている。

「シュナジー、マッキーは何処なの? ここからは分からないわ」

「あそこだよ、もう小さくなって見えないくらいだ」

皆マッキーの乗った車を真剣に見つけた、するとラウルが異変に気づいた。

「ん? 飛んだか? 飛んでいるみたいだな、やはりこの島で間違いなかったか」

シュナジーもクラウスを見ていた。

「おおー、ついに浮いたな! やっぱり今も浮く事ができたのか、あの老人が言った通りだったな、無事に戻って来いよマッキー」

結局シュナジーと三台の車は酸性の水たまりにはばまれ、その場から先へ進む事ができなく、中を浮くクラウスをぼうぜんと見ていた。

「やっぱり我々もクラウスの車両に乗るべきだった。このグランドベースに乗り込む事ができるのはあれだけだ。今となっては後悔するだけだがな」

「やっぱりクラウス以外は行けないって事なのか! そのクラウスもマッキーやハーネスのような人種じゃないと駄目ときたぜ」

「グランドベースは神が宿る島なのだ。その人種はしょせん神の召し使いに過ぎないのだよ」

「あの島に神がいるのか?」

皆は、ゆっくりと島の方へ進んで行くクラウスをずっと見ていた。

「仕方がない、お前らはあの島へたどり着ける方法を考えろ」

「しかし島の下は酸性の液体で近寄れません」

「それではマナ村側から接近すればよいではないか」

「マナ村の林は険しく、行くのは難しいです」

「それは分っている事だ。そこを考えるのだよ。頭で考えるのだ、今すぐ」

「はい、承知しました」

 ラウルの組織はさっさと引き返していった。

 モーリスはグランドベースをずっと見ていた。

「グランドベースがここに移動していたとは。マッキーは誰よりも先にグランドベースの謎を知る事ができると言う事になる」

「でも、戻ってこないかもしれないわ! 記憶が残っているのかも心配だし」

「お母さん、わたし達もあの島へ行くと記憶をなくすの?」

「今まで石英を持っていた老人達は皆この島を覚えていなかったわ」

「そうだったよな。あのおじいさんも昔の事ははっきり覚えていないと言ったぜ」

「何故か分からないけど、わたしの知る限りでは、あの島へ行った者は記憶を消されるみたいだわ。今まで島の正体がわからなかったのはそのせい。島へ行った者は何かをされるようだわ」

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