第27話 集合時間
ようやく空から白々した霧がなくなり、眼下に青々とした草原、上空に青々とした空を望めるようになったころ、飛行機は中程度の高度を西へ向けて飛んでいた。
「そろそろじゃない?」
ミーティアが飛行機の時計を見てから言った。
「よし、じゃあこのあたりで待つか」
アランが操縦輪をひねる。機体が緩やかに旋回を始めた。
「約束通りなら、あと5分もしないで見えると思うんだが……」
景色ゆっくりと左へと流れていく。そして間もなく、
「アラン、あそこ!」
ミーティアがはるか遠くの点を指さした。飛行機よりも低い高度を飛んでいる。まだ人影に見えないが、情報通りならこの時間にこの空域を飛ぶ人はいないはずだ。
「ミーティア、投光器を頼む」
「らじゃ」
ミーティアは投光器を手に取ると、遠くの点に向かってピカ、ピカと一定間隔で光を送った。すると、
「……返ってきたよ!」
異なるテンポで、光が返ってきた。
「予定通りだ、いいぞ」
アランは飛行機の進行方向をゆっくりと西に向けなおしながら、エンジンのスロットルを絞り、速度を下げた。ゆっくりと高度を下げる。
「あとはロイを拾って西へひとっ飛び、だっけ?」
「そうだよ。何事も起こらなければい昼過ぎには帰ってこられる」
「だいじょーぶっしょ、なんてったって俺がついてるんだからな!」
「ルルカ、本当に頼っていいのか?」
「ごめんちゃいちょっと見栄張りました」
ミーティアが椅子の背もたれに勢いよくもたれかかった。
「あーあ、それはそれでなんだかつまらないなあ。せっかく大草原の上まで飛んできたってのにさー」
「この状況下だからな。下手なことはできない」
「そうは言ったってさ、もともとはここで機翼のテストする予定だったんでしょ?」
「それはそうだが、仕方ない」
「もー」
むくれたミーティアだったが、そこでふと思いついた。
「ねえアラン。やっぱり飛行機の操縦って大変なの?」
「ん? 大変ってわけでもないが、俺はまだ慣れてないしなあ」
「手も離せないくらい?」
「うーん。空港でのやり取りもあったし、ふたりの安全を、っていると考えると手を離すなんてことは……」
そこまで言いかけて、アランの表情が硬くなった。
「ミーティア、まさかお前……」
ミーティアはニヤッと笑った。とっても楽しそうだった。
「と、いうわけでちょっとね」
ルルカを膝の上から座席に下ろし、ミーティアは座席から立ち上がった。
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