第5話 ともだち

 草原の先、その森の方向を見ていたミーティアだったが、聞き慣れた飛翔音に気が付いた。

 耳を澄ます。音の方向に目を凝らす。小鳥の姿が見えた。頭の飾り羽がよく目立つ。

 ミーティアは、その姿に手を大きく振った。小鳥が応えるように、体を右に左にと傾けた。高度を下げつつ、あっという間に距離を詰めると、滑るようにミーティアのそばをかすめて、近くの木箱に停まった。

「やっほー、ルルカ。こんな街のはずれで会うなんて珍しいね」

 ミーティアが笑顔で話しかけた。

「いっやぁ、いい感じの西風が吹いてたからさ。気楽に流されながら飛んでたら、こんなとこまで来ちまったよ」

 ルルカと呼ばれた鳥が、気さくに答えた。

「ああ~、いつものルルカっぽい。何か街に用事でもあったの?」

「何言ってんだ、こちとら友達が誕生日を迎えたってことでよ、すっ飛んできたわけだよ。俺ってば、優しいやつじゃん?」

 ルルカが翼を整えながら言った。抜けかけの羽を一本、ついばんで放った。

「ほんと! いやあ、私もいい友達を持ったもんだよ」

「おう褒めろもっと褒めろ。ところでミーティア、今年で何歳なん?」

「んーと……、高等教育を受けられる歳だから……、十六歳」

 ルルカが目を丸くした。

「十六? そのナリで?」

「おい畜生、今すぐ下りてきなさい。全力で可愛がってやる」

 ルルカが激しく翼を打った。

「おうおう! 鳥に対して畜生たぁ、随分な言葉じゃあねえか! このルルカ・ルル・ラハシュ様が黙ってねえぞー!」

「レディに対して小さいとか言ってくる奴に言われたくないねーっ!」

「レディ語るにはまだまだガキじゃねえか! 鳥でもわかるぞ!」

「ほぅーらまたそうやって人のこと馬鹿にするーっ!」

 二人が言い合っているところに、男が戻ってきた。

「なんだ、お前、今日が誕生日なのか」

「そだよ、おっちゃん。なんかプレゼントくれてもいいんだよ。その分たっぷり喜ぶよー」

「そのうちな。考えとくわ。……それよりもお前ら。遊ぶなら、用事を済ましてからにしてくれ。朝ってのはそれほど暇じゃねえぞ」

「あ、そうだった! おっちゃんからアランへの届け物もあるんだった。先生のとこにも行かなきゃだし」

 ミーティアは、渡されていた金属片が、きちんとカバンに収まっているかを確認した。

「よし、おっちゃん、またねー」

 男は、気だるそうに手を振った。

「ルルカも、うち来る?」

「おう、お邪魔するわ。肩に停まってもいい?」

「疲れたらそこでおしまいだからね」

「さんきゅー」

 ルルカが跳ねるように飛んできて、それを慣れた様子のミーティアが肩で受け止めた。

 ミーティアとルルカは、飛行場を後にした。

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