第2話
行方不明者
冬木りか 中2 女 石月志真 中2 男
松海絋 中2 男 宮本秋奈 中2 女
とりあえず僕は心理療法士として、生徒と1対1で話すことにした。
「最近、騒ぎが起きたとか気になったことはあるかな?」
1人の生徒が言った。
「最近りかが学校来てなくて。友達なので心配です」
「そっかぁ。心当たりとかはあるかな?」
「…直接関係あるか分かりませんが松海さん、志真くん、秋奈ちゃんと喧嘩しているようなのを見かけました」
ふむふむ、有力情報!意外とこのやり方効果あるかも。もっとも考えついたのは僕ではなく実島だが。
「それは教室で?」
「いえ、階段あたりです。でもこわくって近づかなくて」
「それは心配だね。でも先生から入院したとか聞いてなければ、なにか他の理由だと思うよ」
話の切り上げ方が強引だっただろうか。
生徒は少しして納得したような表情を見せた。
「そうですね。聞いてもらって少し楽になりました」
そして、生徒は礼をして出ていった。
「最近志真が家にいて、学校には行かないと言ってるんですけどどうすればいいのか分からなくって」
またまた有力情報!というか行方不明届が出ていることを知らないのか?
「本人がそう言うなら無理に連れてこなくても良いと思うよ」
わざと無理にとは言わない。他に会える方法があるからだ。
「ですよね。それはわかってるんですけど、不安でもあるしいつまでいるのかなって」
「そっかぁ。例えば、志真くんと僕が一回話してみるとかどうかな。もし解決できるなら解決するし、出来ないようでも理由は分かる。君に言えるようなことならもちろん教えるよ」
不審がられないよう、自然な営業スマイルを振りまく。
困った顔の生徒は少し考えたのち「お願いします」と言った。
やっと終わった。1人数分とはいえ100人ほどだったのでかなりの重労働だった。
早速生徒の家に行くため、階段を降りる。
ふと下を向くと、気になる汚れがあった。深紅色でいくつかの段にまたがっている。
血だ。
瞬時に判断した。それと同時に“あのこと”がフラッシュバックしそうになり、慌ててほおを叩く。思い出したくない。
わき上がる想いを胸にしまい、推測を始める。
これは結構新しいものだろう。まだ茶色になっていない。
もしかして不登校の原因は……。いやいやそんなことない。“僕のようなこと”にはなっていないだろう。きっと。
5分ほど立ち止まった僕はパシャリと写真を撮って、その場を立ち去った。
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