警察さんの探偵裁判

@isii-asuka

第1話

『探偵さんですよね』


初めてきた電話。


「はい。どうなさいましたか?」

『依頼したい事件があって。詳しい話はそちらに伺って話したいのですが、お時間ありますか?』

「いつでも大丈夫ですよ」

『ありがとうございます。5分ぐらいで着くと思います。よろしくお願いします』

「こちらこそ」


ツー ツー

電話が切れた。

うまく受け答えできただろうか。特に言葉の使い方があっているか気になる。


僕は探偵をしている。自称、だ。実際は依頼が1つも来ないため、ほぼフリーターという状態。正社員として働いた方が儲かるだろうが、諸事情により雇ってもらえそうもない。


これで噂が広まり、もっと依頼が来るようになれば良いのだが。そのためには依頼を解決することが必須だ。


しかし、学生時代に夢を追って探偵の人にインタビューをし、そのまま事務所を開いたため、キャリアは実質0の僕が解決できる依頼だろうか。


不安に思うが、依頼が来ないよりは良い。最善を尽くそう。



ピーンポーン

『先程電話したものですが』

「はい。今開けますね」


ガチャ

ドアを開けると、二十代後半と思われる男性が立っていた。


「そこにある椅子使ってください」


立ち話も失礼なので、隅っこにあった椅子を持ってくる。

「ありがとうございます。突然すみません。私は警察の実島です。署にあった未成年の行方不明届を見てたら気になったことがあったのですが……私たちの方では捜査できないのでお願いしたいと思いまして」


警察!行方不明!

まさかこんな大きい依頼だとは。てっきり探し物とかかと思っていた。


「どうやら宗教系の中学らしいんですけど、そこで1日に4人が行方不明になっておりまして」

「1日で4人ですか。かなりの数ですね」

「はい。ただ…結構閉鎖的な中学でして。サクラ教っていう宗教に親が入っている子が集った学校なんですよ。運営しているのもサクラ教で」


怪しい宗教か。親が変な宗教にハマっているとなれば、その子供はどう育つのだろう。その宗教を信じるのだろうか?


「私は何をすれば良いのですか?手がかりなど教えていただけるとありがたいのですが」


すると、実島はプリントを見せてきた。ここから近い場所に印がされている。


「ここがどうやらその中学みたいで。潜入調査して欲しいんですよ」

「せっ…潜入?それって捕まりません?」

「大丈夫です。そこは根回しをしてますから。私たちが調査しても良いんですけど……あなたの方が適任かな、と思いまして」


実島は意味深な笑いを見せる。


なぜ?と言おうとしてやめた。この人、見覚えのある気がする。そして“あのこと”を知った上で依頼している気がするから。


「もちろんお金は払います。これぐらいですかね」


実島はささっと計算して金額を出す。

おおーっ!


「やります。よろしくお願いします」

「こちらこそ」


僕の反応を見て、ククッと実島は笑った。

結局人は金で動くのか、と思った。少なくとも僕は。

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