隰桑(引用7:君子と出会いたい)
湿地のクワの木は、柔らかに生い茂る。
葉の様子も盛んである。
このクワのごとき君子に出会えれば、
楽しさはいかほどであろう。
湿地のクワの木は、柔らかに生い茂る。
葉の様子も麗しい。
このクワのごとき君子に出会えれば、
楽しからざることなどあり得ようか。
湿地のクワの木は、柔らかに生い茂る。
葉の密集で生まれる影も濃い。
このクワのごとき君子に出会えれば、
徳高き音色が高く響き渡ろう。
心のこの愛を、
どうして告げずにおれよう。
この心の内の思い、
どうして忘れ去ることができよう。
○小雅 隰桑
the 国風詩に見えぬでもないが、君子が歌ったのであれば、孔子の言う素晴らしき「友」に出会えた喜びを歌う、となるのであろうな。詩序は「幽王の時代、君子は皆在野の士。なので宮殿の外の君子に会いたい」と張り切っておる。もはや大喜利である。
■管輅さんのしゅごさ、ぼく忘れない!
・三國志 29 管輅 裴注
・世説新語 規箴6
「知幾其神乎!古人以為難。交疏吐誠,今人以為難。今君一面盡二難之道,可謂『明德惟馨』。詩不云乎:『中心藏之,何日忘之!』」
世説新語にも載る何「ウザガラミ」晏のエピソードである。取り巻きとともに管輅にワイら三公になれるー? と占ってもらった際、管輅は「そんなこと言ってたら破滅すんぞやめとけ」と答えた。取り巻きがぶーたれる中、何晏ひとり「やっべー管輅さんまじ士大夫、全然面識ない俺に諫言してくれるなんて! そのお気持ち、忘れないよ!」と意識高い発言をぶち決めた。なお何晏および取り巻きはその後みな誅殺されている。オチも万全である。
■あっこれ恨み骨髄ってやつだね
・晋書55 潘岳
・世説新語 仇隟1
岳於省內謂秀曰:「孫令猶憶疇昔周旋不?」答曰:「中心藏之,何日忘之!」岳於是自知不免。
西晋宮中のスーパースター、潘岳さんは田舎もんの孫秀をことあるごとにいじめていた。やがてそんな孫秀が八王の一人、趙王司馬倫と結託。八王の乱のプロデューサーとしてのし上がる。上記のやり取りはそんなセレブとなった孫秀と潘岳さんとの再会の時のやり取りである。「やあ、むかし僕が良くしてやったよね?」と聞く潘岳さんに対し、「そりゃもう忘れるはずがないですよ」と孫秀が回答。潘岳さん、あっこれ無理なやつだ、と悟ったそうである。そして後日、無事に処刑された。
■お前らだいしゅき!
晋書103 劉曜
或識朕于童齔之中,或濟朕於艱窘之極,言念君子,實傷我心。『詩』不雲乎:中心藏之,何日忘之!
劉曜軍が西方の蛮族鎮定に成功した。そのことに感動した劉曜陛下が、昔からのことを思い出し、何人もの臣下が布衣の頃からの自分を何それとなく気にかけてくれており、そのためこの日のような功績に結びついた、「その恩義は忘れない」とするのである。調べたところ、そこで名前を挙げられた人物には特に誅殺された記録がない。よかったね!
■テメーどのツラでいけしゃあしゃあと
晋書123 慕容垂
賴卿忠誠之至,輔翼朕躬,社稷之不隕,卿之力也。『詩』云:『中心藏之,何日忘之。』
苻堅が淝水で大敗した後、慕容垂は苻堅より独立、苻堅の息子が守る鄴を攻撃にかかっている。合わせて苻堅には「鄴はうちの旧都なので返してほしいねん、そしたらその後は東西で仲良くしよーや」と手紙を送った。苻堅さんブチギレである。「おまえ俺に忠誠誓ったんじゃねーのかオイ、おまえが淝水の敗戦時に俺を救ってくれたこと今にも忘れてねー、つうか“忘れるはずもねー”けどよー」と語り、その後は裏切りをなじる内容に一変である。大丈夫かこの覇王。情緒不安定に過ぎはせぬか。
■あんたのパパに励まされてきたねん
晋書126
及忝家業、竊有懷君子。詩云、『中心藏之、何日忘之。』不圖今日得見卿也
禿髪傉檀は南涼の二代目君主である。かれは幼いころ後涼の士大夫である宗燮に「君は立派な人物になる」と言われていた。そして彼が南涼の君主となって後、後秦から和平の使者として遣わされてきたのが宗燮の息子、宗敞であった。禿髪傉檀は宗敞の手を取り、「あなたのお父様の言葉を心中に収め、精励してきた。そのゆえにあなたとこうして会えたのだ」と語った。美しいお話である。ちなみにまもなく南涼と後秦の仲は決裂、殴り合いに移行している。
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E4%BA%94#%E3%80%8A%E9%9A%B0%E6%A1%91%E3%80%8B
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