鶴鳴(引用4:在野の人材を求める)
山深き沼沢からの、鶴の声。
遠き野原にあっても聞こえてくる。
魚は泉の深くに、あるいはほとりに。
ムクノキの生える庭園にて楽しむ。
落ち葉がまるで敷物のよう。
他の山にある石にて、
我が山の石を磨き上げよう。
山深き沼沢からの、鶴の声。
大空に、よく響く。
魚は泉のほとりに、あるいは深くに。
ムクノキの生える庭園にて楽しむ。
そこかしこにはコウゾが生える。
他の山にある石にて、
我が山の石を磨き上げよう。
○小雅 鶴鳴
めでたき鳥、鶴のありようは、遠き地よりもその名声が良くとどろく。そして魚の振る舞いともからめ、在野の偉大なる賢人の存在を歌う。「他山の石」とは「自らがいる場所の外から持ち込んだもの」で自らを磨くべし、とするのであろう。情景描写と教訓的意向が見事に合体を遂げておる。
■ワイはのでのんびりしたいんや
三國志38 秦宓
聽玄猿之悲吟,察鶴鳴于九皋,安身為樂,無憂為福
同郷人の王商から一緒に劉璋様のもとで働かないか、と誘われた時のお断りの返事における一節である。人里離れた地で漢の詩人、王褒がものした「洞箫賦」における一節、そして当詩における一節にそれぞれ記される鳴き声を耳にしつつ、のんびりとしていたい、と歌う。もっとも彼はのちに劉備に召し抱えられ、大活躍するのだが。
■天に耳あり
三國志38 秦宓
溫曰︰「天有耳乎?」宓曰︰「天處高而聽卑,『詩』雲︰『鶴鳴于九皋,聲聞于天。』若其無耳,何以聽之?」
呉の張温との学識バトルである。張温が「天には耳がありますか」と問えば、秦宓は当詩を引用し、「天は高くにあれど低きところの音を聞きとる、もし耳がなかったならば、聴きとれまい」と回答した。なお張温よりの質問は全部で三つだが、秦宓はすべて詩経引用で切り返した。
■人材だ、人材がいる
魏書4 拓跋燾上
訪諸有司,咸稱范陽盧玄、博陵崔綽、趙郡李靈、河間邢穎、勃海高允、廣平游雅、太原張偉等,皆賢儁之冑,冠冕州邦,有羽儀之用。詩不云乎,『鶴鳴九臯,聲聞于天』,庶得其人,任之政事,共臻邕熙之美。
河北を統一した北魏太武帝拓跋燾。その統一事業中になした詔勅の一節である。いわゆる漢人名族に属する名士らの名を挙げ、彼らの存在が当詩に言う鶴であるとし、彼らを採用し、政務を充実させたい、と語るのである。
■人材おるねんで
世説新語 賞譽20
嚴仲弼九皋之鳴鶴,空谷之白駒。
該当条は、蔡洪と言う人物が呉にいる名士たちを言葉の限りを尽くしてべた褒めしまくっているものである。その中で厳隠と言う人物を「地方長官として善政を敷き、その思慮は深く、度量は広い」と語り、当詩や小雅白駒にて称揚されているような人物に相当しよう、と語るのである。
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E4%B8%80#%E3%80%8A%E9%B6%B4%E9%B3%B4%E3%80%8B
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます