澤陂(引用5:あの人を想う/風俗の乱れ)

澤陂たくひ



彼澤之陂かたくしひ 有蒲與荷ゆうほよか

有美一人ゆうびいちじん 傷如之何しょうじょしか

寤寐無為ぼぎむい 涕泗滂沱ていしぼうだ

 あの沢辺にガマとハスが生い茂る。

 あの素敵なお方を見ると心が痛む、

 ああ、なんとしよう。

 寝ても覚めてもやれることはなく、

 ただ涙にくれるばかり。


彼澤之陂かたくしひ 有蒲與蕑ゆうほよけん

有美一人ゆうびいちじん 碩大且卷せきだいしょかん

寤寐無為ごびむい 中心悁悁ちゅうしんえんえん

 あの沢辺にガマとハチスが生い茂る。

 あの素敵なお方は堂々と、

 かつ好ましい。

 寝ても覚めてもやれることはなく、

 心のうちのやるせなさ。


彼澤之陂かたくしひ 有蒲菡萏ゆうほかんたん

有美一人ゆうびいちじん 碩大且儼せきだいしょげん

寤寐無為ごびむい 輾轉伏枕てんてんふくしょう

 あの沢辺にガマとハスが生い茂る。

 あの素敵なお方は堂々とし、

 かつ頼もしい。

 寝ても覚めてもやれることはなく、

 枕に伏して身もだえる。




○国風 陳風 澤陂


一緒になりたいくらい思いを募らせる人がいる、しかしなすすべもない。切ない思いというか、過分に少女漫画チックである。読んでいるだけでお花の背景が浮かんできそうであった。ふむ、ともなれば儒家センセーはまた風俗の乱れをお憂いになられるのかな。




○儒家センセー のたまわく


陳の霊公は国事を無視し淫乱にふけり、これによって国が乱れた! そのことを批判したのである!




○崔浩先生、うなずく。


(うむ、平常運転であらせられた)




■滂沱といえば涙だが


現代日本に於いて滂沱と言えば涙が流れる様をさすが、それはいつ頃から始まったのであろうか。ひとまず史書での引用を拾ってみた。少なくともこの当時はただ「すごい勢いで溢れかえる」のみの意味合いのようである。


・三国志44 蔣琬

 夜夢有一牛頭在門前,流血滂沱,意甚惡之,呼問占夢趙直。

・三国志64 孫峻 裴注

 贊乃以刀自割其筋,血流滂沱,氣絕良久。

・晋書13 天文下

 晷度推之,在箕、鬥之間,蓋燕分也。案占:「為營首。營首之下,流血滂沱。」

・晋書51 束晳

 秋繁滂沱之患,水旱失中,雩禳有請。

・宋書22 楽四

 決漳水,水流滂沱。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%B8%83#%E3%80%8A%E6%BE%A4%E9%99%82%E3%80%8B

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