碩鼠(引用1:無駄飯ぐらいを嫌う/厳しい取り立てを嘆く)

碩鼠せきそ



碩鼠碩鼠せきそせきそ 無食我黍むしょくがき

三歲貫女さんさいかんにょ 莫我肯顧ばくがこうこ

逝將去女せいしょうきょにょ 適彼樂土てきからくど

樂土樂土らくどらくど 爰得我所えんとくがしょ

 ああ、大きな鼠よ。

 キビを食い荒らしてくれるな。

 三年もそなたに仕えたのに、

 まるで顧みてもくれなかった。

 もはやそなたのもとを去り、

 安楽なる地へ行こう。

 楽土、ああ、楽土。

 やすらぎはきっと、そこにある。

 

碩鼠碩鼠せきそせきそ 無食我麥むしょくがばく

三歲貫女さんさいかんにょ 莫我肯德ばくがこうとく

逝將去女せいしょうきょにょ 適彼樂國てきからくこく

樂國樂國らくこくらくこく 爰得我直えんとくがちょく

 ああ、大きな鼠よ。

 ソバを食い荒らしてくれるな。

 三年もそなたに仕えたのに、

 まるで報いてはくれなかった。

 もはやそなたのもとを去り、

 安楽なる国へ行こう。

 楽国、ああ、楽国。

 そこでなら、きっと実直であれる。


碩鼠碩鼠せきそせきそ 無食我苗むしょくがびょう

三歲貫女さんさいかんにょ 莫我肯勞ばくがこうろう

逝將去女せいしょうきょにょ 適彼樂郊てきからくこう

樂郊樂郊らくこうらくこう 誰之永號すいしえいごう

 ああ、大きな鼠よ。

 苗を食い荒らしてくれるな。

 三年もそなたに仕えたのに、

 苦労が報いられることは無かった。

 もはやそなたのもとを去り、

 安楽なる町へ行こう。

 楽郊、ああ、楽郊。

 誰がそこで、歎きを上げるだろう。




〇国風 魏風 碩鼠


大きな鼠、即ち君主であるか、夫であるか。「無駄飯ぐらいのもとは嫌だ」と嘆くわけであるが、「ここではない、どこか」に理想郷なぞない、と本当はわかっているはずなのに、それでも歌わずにはおれぬ。あまりにも悲痛な叫びである。




〇儒家センセー のたまわく


苛斂誅求なる役人の取り立てにあえぐ民らの歎きの歌である! その貪婪なるを恐れ、また忌むが為に大いなる鼠として喩えるのである!




■孫盛、田豊の死を惜しむ


三國志6 袁紹伝裴注

夫諸侯之臣,義有去就,況豐與紹非純臣乎!詩云「逝將去汝,適彼樂土」,言去亂邦,就有道可也。


袁紹に従った参謀、田豊は袁紹敗北後に殺された。その出来事を東晋の孫盛が悼むのである。各群雄の家臣にとって重要なのはどの群雄の下につくか、であろう。まして田豊は袁紹に生来従うような間柄でもなかった。にもかかわらず死を賭して仕えたのである。かれを捨て安楽の地へ行っても良かったであろうに、まして乱世を生き抜こうというのであれば、そう語っている。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%BA%94#%E3%80%8A%E7%A2%A9%E9%BC%A0%E3%80%8B

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