子衿(引用4:お見限りのあなた/学の衰えを嘆く)
青々としたあなたの襟もと、
遥かなる私の思い。
こちらから赴かないからと言って、
どうしてあなたは手紙を
よこしてくれないのか。
青々としたあなたを飾る宝玉、
遥かなる私の思い。
こちらから赴かないからと言って、
どうしてあなたは
私を訪ねてくださらないのか。
城のやぐらのふもとで、
踊ったり跳ねたりする人たちを見る。
あなたとのお見限りは、
ただの一日が三か月かのよう。
〇国風 鄭風 子衿
なかなか会いに来てくれない恋人のことを思う詩に見えるが、どちらかと言うと時間が圧縮されているようにも感ぜられる。わずかな時間離れているだけでも、あなたに会いたくてたまらなくなる。強烈な思慕の念が見られよう。
〇儒家センセー のたまわく
鄭国が乱れることで教育システムもまた崩壊した! 歌唱者は学校で学びたいのであるが、それが許されず、学友ともしばらく会えずにおる! 君子の学とは文義を通じて友と出会い、友との交わりより仁を得ることにある! 独学により友と語らう機会を失わば、その分見聞を得るチャンスをも失うのである! ゆえに歌唱者は友が学を擲ったことを嘆くのである!
■人材が欲しい
晋書91 虞喜
喪亂以來,儒雅陵夷,每覽『子衿』之詩,未嘗不慨然。
時は西晋、懐帝の時代。つまり永嘉の乱ド直前である。八王の乱のおかげで、宮中は最悪の人材不足。なので虞喜(三國志の呉の虞翻と同族)の評判を聞き、召喚したいと思っての詔勅の一節である。良い儒家はみな殺されてしまい、当詩を読むたびに悲しくなってくる、というのである。
■内乱続きで人がいない
晋書125 馮跋
自頃喪難,禮崩樂壞,閭閻絕諷誦之音,後行無庠序之教,子衿之歎復興於今,豈所以穆章風化,崇闡斯文!
北燕を建てた馮跋は、晩年に内乱続きとなり、多くの臣下を殺さざるを得なくなった。いろんなルールもぐちゃぐちゃとなってしまい、改めて当詩に歌われる感情を思い出さざるを得なくなった、という。なので改めて学問を奨励せねばなるまい、というのである。
■学問の荒廃を嘆く
宋書3 武帝下
後生大懼於牆面,故老竊歎於子衿。
422 年、すなわち劉裕最晩年の詔勅より。荒事続きで学問が廃れてしまい、「大いに恐るべき後生」は生垣の前で荒事におびえ、年老いたものは当詩にあるような歎きに嘆息する、というのである。ところで「後生大懼」句は論語子罕編よりの借用であり、ここではダブルミーニング的に用いられておる。こういうこしゃまっくれた用法をするのは、間違いなく傅亮である。ともあれ劉裕は劉毅を討伐するあたりでも、嫁の兄に対して学問の奨励を依頼している。「武一辺倒の人」と思われがちな劉裕であるが、実際のところ学者系の家柄であるし、嫁も思いっきり学者系の家柄なのである。
■人生、どう楽しもうか。
宋書21 楽三 對酒短歌行
青青子衿,悠悠我心。但為君故,沈吟至今。
楽志の題には「武帝詞」なる言葉も見える。となると、これは劉裕の治世を歌ったものなのであろうか。或いは劉裕の想いを歌ったものか。この詩の一行を見れば「しばらく会えていないあなたが着ている着物の青々とした襟元を思い出し、あなたを想って歌う」となる。なおこの詩の第一行は「對酒當歌,人生幾何!」である。曹操の詩のパクリかよ!
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%9B%9B#%E3%80%8A%E5%AD%90%E7%9F%9C%E3%80%8B
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