鶉之奔奔(無体な夫/姜氏の不義を批判)
女→男 結婚 不満 衛 不義批判
ぽんぽんと飛ぶウズラ、
カササギはごうごうと。
こんな鳥たちのような
めちゃくちゃな人を、
兄とせねばならないとは!
ごうごうと飛ぶカササギ、
ウズラはぽんぽんと。
こんな鳥たちのような
めちゃくちゃな人を、
夫としなければならないとは!
○国風 鄘風 鶉之奔奔
ウズラも鵲も、非常に荒っぽい鳥なのだそうである。特に鵲は「メスからオスをたぶらかす鳥」なのだそうで、儒者センセーがたの大好きな指弾対象の象徴という感じがしてよいな。なお原釈では「君」を君主としてとっておるが、ただ詩を楽しむのであれば、無体な夫を迎えねばならなくなった哀れな姉妹の悲哀と取った方が物語的でよい。
○儒家センセー のたまわく
「刺衛宣姜也。衛人以為,宣姜,鶉鵲之不若也。」
衛人は言う! 衛の宣公の妃となった姜氏はクソである! 姜氏は宣公の死後、宣公の庶出の子と不義密通をなした! ウズラにもカササギにも劣る存在である、と! その想いがこの詩に託されたのである! 詩に言う「君」とは、女君、すなわち姜氏を指すのである!
■司馬倫(八王の乱のなかのひと)はウズラ
・晋書28 五行中
・宋書32 五行三
趙王倫篡位,有鶉入太極殿,雉集東堂。天戒若曰,太極東堂皆朝享聽政之所,而鶉雉同日集之者,趙王倫不當居此位也。『詩』云:「鵲之強強,鶉之奔奔,人之無良,我以為君。」其此之謂乎!尋而倫誅。
司馬倫が賈南風を打倒し宮廷入りした後、あろうことか恵帝司馬衷をも廃位し、帝位についた。この時宮殿にウズラとキジとが飛び込んできたという。占いでは「この両者が同時にやってくるとか最悪」と言われ、そして当詩で描かれておるようにウズラは凶暴な鳥の象徴。つまり司馬倫のごときクソがながらく権力を握れるはずもないとされ、そしてその見立て通りとなりましたよ、というお話である。この後晋は皇族たちが血で血を洗う主導権争い、いわゆる八王の乱を本格化させていった。
■ほんぽんふんぷん
木星は十二年で天を一周し、ここから歳星と呼ばれる。このとき十二等分された領分がそれぞれ星紀、玄枵、娵訾、降婁、大梁、實沈、鶉首、鶉火、鶉尾、壽星、大火、析木と呼ばれ、特に木星が鶉火の位置に来ていると吉である、という(周が殷を倒した年であるらしい)。そうした次第で用いられたようである。ただし襄公27年の用法は普通に「えっちなのはいけないんですっ!」である。これは僖公の時代の表記に著述者が引きずられたのか、あるいは毛詩以外のテキストでは賁賁であった、と言うことなのかな。まぁ妄想までしか許されぬ案件であろうが。
→無憂様より『詩三家義集疏 』の存在をご教示いただき、そこには「魯詩斉詩では賁賁に作る」、なる記述があった。音が優先、文字はやや二次的、なのであろうな。ともあれご教示くださりありがとうございます。
・左伝 僖公5
・漢書21 律暦
・漢書27 五行
鶉之賁賁,天策焞焞,火中成軍,虢公其奔。
・左伝 襄公27
善哉。民之主也。抑武也不足以當之。伯有賦鶉之賁賁。
■良くねえよおまえ
小雅角弓に「民之無良」句があり、こちらとの混同がしょっちゅう起こっているようである。基本的に引用として格調が高いのは大雅>頌>小雅>国風であると思われるので、どうせ引くなら国風より雅、としたいのは人情なのやも知れぬ。そして章帝の発言は後半がまさしく角弓なのであるが、こう言うところで当詩と角弓の混同が起こることを、当世の人間がどのように思ったのかは気になるところである。
・左伝 宣公2
詩所謂人之無良者。其羊斟之謂乎。
・後漢書3 章帝
帝曰:「上無明天子,下無賢方伯。『人之無良,相怨一方。』斯器亦曷為來哉?」
・魏書19.1 元忠
帝曰:「人之無良,乃至此乎!」
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%B8%89#%E3%80%8A%E9%B6%89%E4%B9%8B%E5%A5%94%E5%A5%94%E3%80%8B
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