赤いピンヒール

@a_k_s_t_n

第1話

これは、私が中学生だった頃の話です。


私の中学校の前には横断歩道がありました。横断歩道の先には先生が立っており、いつも先生との挨拶で朝が始まります。

その日もいつも通りに横断歩道を渡り終わって挨拶をしました。


「おはようございまーす。」


「はい、おはようございます。」


そして校門に近づいた時にふと気がつくと、コツコツコツ、とピンヒールのような高い音の足音が後ろからしました。


私が横断歩道を渡る時は周りに同じ中学生も、大人の人もいませんでした。しかし自分が気がついてなかっただけで、もしかしたら人がいたのかもしれない、その時はそう思いました。


そのまま気にせず、校内に入り玄関へと向かいました。まだコツコツコツ、とピンヒールの音が聞こえます。


おかしいな…もしかして先生?


玄関まであと数十歩。まだピンヒールの音が聞こえます。


私の通っていた中学校は生徒の玄関の少し奥に職員玄関がありました。


もう少ししたら後ろの人もそっちに行くよね…。


コツコツコツ、ピンヒールの音が聞こえます。

私は少しだけ立ち止まってみました。

すると、ピンヒールの音も止まりました。


おかしい。


私はここでやっとこのピンヒールの音に恐怖を覚えました。

玄関まで2メートルくらいを私は走りました。あまり走ってないにも関わらず、とても息が上がって苦しかったです。そしてゆっくりと後ろを振りかえってみました。

そこには誰もおらず、職員玄関のほうを向いてもピンヒールを履いている先生なんていませんでした。


そのあとは無我夢中で教室まで走りました。その時は50メートル走の自己ベストを更新したんじゃないかと思います。


息を整えて、ふと思いました。

うちの先生ってピンヒール履く先生も、徒歩で来る先生もいないはずだよな…。


ではあのピンヒールの音は誰の足音だったのだろうか。


その横断歩道で何かあったかは分かりませんが、後にも先にもこのピンヒールの音が聞こえたのはその日だけでした。


今では自分が体験した不思議な出来事として話のタネにできますが、思い出すと背筋にひやりとしたものがはしります。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤いピンヒール @a_k_s_t_n

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る