恋人失格
こうして世界不適合者の彼女らは雨の日を待って川へと赴いた。思えば彼女達の日々はいつも雨やら涙やらの湿り気を帯びていて、その最後の日も例に漏れずそうだった。
彼女が傘を彼と分かちながら口を開く。
「結局私達、憧れの人間をなぞる程度の陳腐なことしか成し遂げられなかったね」
彼は自分の左肩が濡れている事を気にかける様子もなく答える。
「そうでもなきゃこんな所までわざわざ来ない」
その言葉尻は頼りなさげに傘の中に響いた。
とうとう死に場所を目の前にして彼が口を開く。
「なぁ 俺思うんだけどさ」
「うん」
彼らの足元には濁流が広がっている。恋人失格の彼らは手を絡ませる。
「この世はクソだよ」
「……そうだね。でも、そんな世の中を生き永らえられなかった私達はたぶん、もっとクソだ」
「そうだよなぁ」
二つ分の水音の後、そこに残ったのは雨音だけだった。
恋人失格 冥仙りな @grumble
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