WEB小説の異世界ファンタジーで求められているのは?

 さて、今のラブコメに求められている要素は非常に単純で、それをおさえておけばたぶん誰でも人気のラブコメが書けるんじゃないかって気もしたが、異世界ファンタジーはさすがに少々複雑である。


 なんせ、最近急に人気になったラブコメと違って、ずーっと前からWEB小説では人気のジャンルだからである。当然、求められる要素も多岐にわたる。


 なろうが注目され始めた当初は、とにかく「異世界召喚」「異世界転生」「主人公最強」「ストレスフリー」「チート能力で無双」「ハーレム」(最後二つはまとめてチーレム)。こんな要素をちりばめておけば、サルでもなんでも人気作品は書けた……ような気がする。


 しかし、最近は追放ものが人気ということで、「ストレスフリー」であることは、必ずしも求められないようだ。追放というストレス展開から物語が始まるわけなのだし。おそらく、WEB小説の読者は「ざまぁ」の快感を知ることで、ストレス展開に対し、ある程度耐性を持ったのだと考えられる。進化である。


 ただ、当然、とりあえず追放スタートというだけでは読者はつかない。普通に考えると、冒険者仲間から主人公が追放される理由はいろいろあるはずだが、「自業自得で追放」「ただの喧嘩別れ」「音楽性の不一致」みたいな理由は読者は求めていない。追放スタートで大事なのは「主人公が絶対的な被害者」であることだ。つまり、あくまで「理不尽な仕打ち」として追放されなければならない。そうしないと、あとで被害者マウント取りながら上から「ざまぁ」できないでしょ? 女性向けファンタジーで「婚約破棄」が人気なのもまったく同じ理由だろう。……だろう?(ぶっちゃけ、婚約破棄もののことよく知らないんだが?)


 また、追放物が人気ということで、主人公は必ずしも異世界召喚・転生している必要はなくなった。現地主人公でも全然ウェルカムなのである。


 さらに主人公に求められるスペックも、なろうブーム初期の「とにかくなんでもできて最強!」から、「追放される原因になったけど、実は超使える外れスキル持ち」ぐらいでよくなった。まあ、作品によっては、その「超使える外れスキル」が万能だったりするわけだけれども……。


 それとは別に、物語開始時点で主人公が最強でなくても、最強を目指して成長していくという「成り上がり」ものとしてしっかり提示していれば、受け入れられるようである。


 また、私にはよさがまったくわからないのだが、追放ものと同じぐらいスローライフものは人気がある。これもなろうブーム初期にはなかったものだ。しかし、当然私にはよさがまったくわからないので、それについて分析ができない。(ちょw)。ここではスローライフ人気だよ!とだけ言っておく。あとは知らん。


 ただ、上記した最近人気急上昇中の追放もの、スローライフものだけではなく、「最初から主人公最強」なども、もちろん人気がある。というか、「主人公最強」という要素は、神話の時代から人気のジャンルである。人類が普遍的に求めている要素である。ハーレムとかも当然そうである! 人類みんな紀元前から「俺TUEEEして、モテモテになりたい!」って願ってたんだよ。


 あと、計測中伸びてたタイトルの中には「主人公の仲間のペットが強い」みたいなのもいくつかあった。もふもふと「俺のペットすごい⇒俺すごい」の両方の要素があるからだろうか? 


 なので、異世界ファンタジーを書くにあたって、最近人気の追放もの、スローライフものに必ずしもこだわる必要はない。ただ、当然、それに匹敵するような人気の要素をちりばめておかないと、読者はつかない。凡人主人公が凡人仲間と普通にダンジョン攻略とか誰が読みたがるかっ! いや、キャラがよければそういうのも面白いんだろうけどさあ。(私は好きですよー)


 あと、なろうのランキングなどでよく見る追放ものの長文タイトルがすべて同じような流れになっているのは、非常に興味深いところだった。


 例えば、こんな感じだろうか?


「外れスキル〇〇のせいで無能とされS級パーティーを追放された俺ですが、実は〇〇はチート級に使えるスキルでした! このスキルを使って成り上がっていく俺を見て、俺を追放したS級パーティーは悔しさで泣いた!」


 こんな、十秒で考えて一分でタイピングしたようなタイトルだけど、これ、そのへんにありがちな追放もののタイトルよりよっぽど強いからね? だって、最後に「ざまぁ」保証ついてるもん。泣いたってところね?(なろうのタイトルは百文字以内なので、ギリセーフだ!)


 あと、自画自賛するわけじゃないが、追放されたのが「S級パーティー」ってところも、キャッチーな要素だよね? B級パーティーだとなんか「ざまぁ」の格が落ちるっていうか。あと、「チート」「成り上がり」というパワーワードがあるのもいいですよね?


 まあ、それはともかく、追放もののタイトルはみんな、「外れスキル〇〇のせいで無能とされS級パーティーを追放された俺ですが、実は〇〇はチート級に使えるスキルでした!」の部分はだいたい共通してる。スキルじゃなくて前世の記憶がよみがえるパターンもあるが。で、そっから先が微妙に違う。


 そして、そっから先の内容で強いのは、スローライフ始めるか、上の「ざまぁ保証」つけてるやつだろうと思う。追放した側のパーティー崩壊とかね。ハーレムとかも許されるのかもしれないが。



 ※ちゃんとタイトルにざまぁ保証つけたので、無事フォロワーが伸びた例


~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間そのスキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がる。なお俺を追放したパーティーは没落した模様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921435730

キャッチコピー 追放系、ファンタジー物語


フォロワー (+9)



 そう、追放ものを好む読者には、心の中に、「この小説はちゃんとざまぁしてくれるのか?」という不安がある。マジである。ざまぁ詐欺して読者集めているやつ、本当に多いから! で、そういうのつかまされると、読者は「この小説はあと何十万字読めばざまぁできるんだい?」ってキレてしまう。


 そういう背景があるので、追放もののタイトルやあらすじにしっかり「ざまぁ保証」がついていると、読者はすごく安心して読むことができる。もちろん、その保証が確かなものという保証はどこにもないのだが……。





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