第16話社会人には「気配り」が必要です。Part2
俺と
「揉めてる女子は、神崎お前と
「うん、そうだよ。みんな私の大事な友達!」
「そういうのいいから。」
カランとコップの氷の音が聞こえる。それが、より冷ややかな空気とともに彼女の顔から熱が冷めるのを感じた。
放課後の現在、俺と彼女は例のペア決めについての詳しい話をするため、学校近くのファミレスに集まっていた。
「神崎以外は、なんて言ってるんだよ。皆、同じグループになりたいって一点張りか?」
「んー、多分それはどうでもいいって感じ。どちらかと言えば、もし私のグループにならなかったら余り物みたいな気持ちになるのが嫌なだけだと思う。」
「なるほどね。」
人間は群れをなさなきゃ生きていけないと感じる生き物だから仕方ない。ましてや、孤立している桜井の存在が自分もその立場になるんじゃないかという恐怖心を彼女達に抱かせている。これが今回の件で最重要問題になっているだろう。
「神崎は話を聞く限り、個人的に誰かとペアになりたいって要望はないんだな?」
「そうね、穏便に済めば誰とでもいいわ。」
実際問題それが1番難しい。4人の中から2人選ぶと友達との間に差をつけてしまったことになる。これを俺が2人選んだとしてもそれはあまり変わらないだろう。
なんなら、ワンチャン思春期の女子たちの妄想で「神崎が言えないから俺が代弁した」ということにもなりかねない。女子って怖い。超怖い。
「そういえば神崎は桜井のことどう思ってるんだ?」
「どう思うって何よ?普通の子よ。でも、周りと一生懸命関わろうとしない子かな。今回の件と私からしたら彼女の自業自得だと思ってるわ。まあ、好きでも嫌いでもないっていうのが私個人の感情かしら。」
コイツ、すげぇ。社会人8年目の俺が思うに職場に彼女がいたら近づきたくない。いや、今もだけど。
「なるほどな。神崎、好きなやつとかいるのかよ?」
「それって口説いてるの?」
彼女は試すような薄笑いを俺に向ける。話の流れとして友達で好きなやつがいるのかという話なのに、ワザと
俺は話し込みすぎて氷で薄まったアイスティーを一口飲み、話を進める準備をした。
ここからは彼女の本心に触れていこう。
より慎重に言葉を選んで。
「まあ、気にならなくはないけど、今は友達として好きなやつがいるか?って話だ。」
「ふふっ…おかしな質問するね。友達は好きに決まってるでしょ?」
「残念ながら俺にはそうは見えないな。早川も山本も田中も川端も…桜井も変わらないんじゃないか?」
「どうしてそう思うの?」
さっきまでの笑顔とは打って変わって、冷たい表情を俺に向けてくる。
カランッと氷が溶けて滑り落ちる音とともに背中にヒンヤリと汗が流れる。
落ち着け、相手は女子高生だ。商談相手じゃない。「神崎、お前は完璧すぎる。多分、俺に相談しなくても解決できる。現に一回真剣に悩んでる姿を友達に見せるだけのために俺を使っただけだろう?」
より一層迫力のある彼女の視線は障子ぐらいなら突き破りそうだ。
どれぐらいの時間が経ったのだろう。
嫌な沈黙が続く。
「そうだったとしても、この件はお願いするわ。」
彼女はテーブルに置いてある伝票を持ち、そそくさと帰ろうと学生鞄を持ってレジに足を向ける。
「おい、ちょっと待っ…」
彼女を引き止めようと手を伸ばすと、ヒラリとかわされた。
「そうそう、彼女が嫉妬してさっきから、ずっと見てるわよ?」
「彼女?」
窓の外に目を向けると、そこには見覚えのある飲みかけのアイスティーのような綺麗なブロンドヘアー。夕日に反射して輝くエメラルド色の瞳が俺を捉えている。
「あっーーーーー!!」
「それじゃあね、柊くん…お手並み拝見と行こうじゃないの。」
俺の焦りを横に彼女は帰ってしまった。
心の整理と諦めの為に、少し大きめの溜息を吐く。
今日も忙しくなりそうだ。
「残業代は出るんだろうなぁ!」
扉のカランっという鈴音を置き去りに、俺は彼女のもとへと駆け寄るのだった。
魔法使いの彼女は、俺を許してくれない。 祭 仁 @project0805
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