第三十一話 神風は西海岸に吹く

 北西太平洋の大海戦が終了した翌日、アラスカ、ハワイ、ミッドウェイより総勢120万もの兵員を載せた輸送船と上陸用舟艇が出航した。数に余裕がある潜水艦と駆逐艦や軽巡洋艦を主とした護衛艦隊に守られながら。


 そして出航から二週間がたった10月9日、アメリカ西海岸一帯に上陸を開始した。これほどの攻撃を予測せず東側に留まっていた米軍は現地守備部隊に甚大な被害を受けながら撤退し次々に港を明け渡した。上陸開始から四日経った頃には西海岸港湾都市のほとんどを占領した。そして前線の整理がついたあたりで120万の軍隊が一挙にワシントンめがけて侵攻を開始した。

 初期は航空隊との綿密な連携も相まって順当に攻勢は成功していた。しかし、そこにロッキー山脈が立ちはだかり、攻勢の速度は一気に低下した。

 抵抗する現地の州兵を強引に撃滅し十万を超える被害を出しながらロサンゼルスの確保に成功した。

 そこに七式中戦車と五式砲戦車によって構成された機甲師団が十個師団投入され、敵の拠点に対する攻撃がなされた。

 アメリカ軍はこの未だ見ぬ敵車両を破壊するすべなど見つけることができず、ただただ蹂躙されていくだけだった。山岳地域を突破した機甲師団は後方の拠点を荒らしながら進軍。山岳の防衛に固執する敵部隊を両翼から追撃し現地時間の10月29日に敵部隊の包囲に成功。この時点ですでに二十万人を損失した米国は甲を会議の話を持ち出すだろうと思われていた。しかしロッキー山脈を歩兵が越え切ったあたりで東海岸にいた主力部隊が反撃のために攻勢にかかった。


 この米軍の徹底的な反撃作戦は日本軍に大きな損害をもたらし、ロッキー山脈を再び下り、撤退させられてしまった。



 日本軍の劣勢が報告され、アラスカに数個の航空隊が派遣された。それはCAS仕様に改装された零戦隊である。彼らは本土で特殊な訓練を受け、近接航空支援のプロとなるまでになっていた。


 米ソと国境を接し、戦争状態にある。いかに早く米ソを講和会議に引きずり出すかがこの戦争の最後の鍵となるだろう。

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