Spuren des Sturzes Deutschlands

Folge20 Die größte Krise des Reiches

 ドイツに原子爆弾が投下され、そしてノルマンディーに連合軍が再び上陸を仕掛けた。そしてイギリス海峡に向けていた前線は崩壊。どんどんと敵兵がなだれ込み、撤退しても背後を撃ち抜かれるような状況がいつまでも続いていた。そして追い打ちをかけるように枢軸国の一員であったルーマニア鉄衛団において社会主義革命が発生。東部戦線の維持が困難となっていた。

 そして、ベルリンへ段々と近づいてくる敵に対し対策を講じるため、ベルリンの総統用地下壕には各将校とアドルフ・ヒトラー総統閣下がいた。


「敵は広範に進行中で、南方ではツォッセンを奪取し、そしてそのままシュターンスドルフに進行中です。敵はフローナウとパンコーの間の北縁で行動しており、東部ではリヒテンベルク、マールスドルフ、カールスホルストの線に到達しております。」


ハンスが地図を指さしながら総統に説明する。


「シュタイナーが...シュタイナーが来れば...彼のノルマンへの攻撃が成功すればすべては安泰だろう」


「総統閣下...シュタイナーは」


「シュタイナーは?」


おろおろとするハンスにしびれを切らしたアルフレートが声を上げる。


「シュタイナーの攻撃は失敗しました!集まった兵力は予定の半分以下でした!師団なんて今となれば地図にあるだけの存在なんです!」


ヒトラーの表情が凍る。


「以下の者は部屋に残れ。カイテル、ヨードル、クレープス、そしてブルクドルフ。」


名前を呼ばれた以外の将校がぞろぞろと部屋から出ていく。そして全員が部屋を出きったところで、ヒトラーが怒号を上げる。


「命令したんだぞ!シュタイナーの攻撃は命令だったのだ!いったいどこのだれが、私の命令に反逆するなどという大それたことをしようというのだ!そしてその結果がこれだ!陸軍の嘘つきどもが!皆嘘を吐く!親衛隊もだ!将軍はどいつもこいつも下劣な臆病者だ!」


「総統閣下。それは戦地で血を流す将校に対するあまりの侮辱です!」


ヴィルヘルムが我慢の限界に達し、思わず口に出してしまう。それは総統の怒りをさらに強めることになった。


「下劣な臆病者!負け犬!国家の恥だ!」


「いくら総統とはいえ...」


「将軍どもはドイツ人のクズだ!栄誉もへったくれもあるものか!やつらは将軍などと言って偉ぶっているが、ただ士官学校を出たというだけだ。そこで何をしていたかというと、ナイフとフォークでお食事のお稽古をしていただけだろう!そして陸軍は私の計画をいつも邪魔してくる!やつらが頭で考えることといったら、私の歩く道に邪魔ものを置くことだけだ!私ももっと早く、高級士官様どもをみな粛清しておくのだった!あのスターリンのように!」


「総統...」


大声でずっと怒鳴り散らして息が切れた様子の総統は椅子に座り、また話し始める。


「私は、士官学校などというところに通っていない。そのかわりに私はひとりで、私自身の力のみで、全ヨーロッパを征服してきたのだ。裏切り者に...初めの初めから!ずっとずっと騙されて!裏切られていたんだ!ドイツ国民への恐ろしき裏切りだ!だが見てるがよい。いつか貴君の血で償う時が来るであろうから!己の血に溺れるのだ!」


彼の目に少しの涙が浮かぶ。


「私の指揮は届かない。こんな状況でやってたって、なんの意味もない。もうお終いなんだ。この戦争は負けだ。しかし諸君、私がベルリンを捨てるだろうなどと思っているならば、それはとてつもない間違いだ。そんなことをするくらいなら、私は自分の頭に銃弾を打ち込む。君たちは自分のしたいようにしたまえ。」



 それから二週間後の10月18日、崩壊した東部戦線のソ連軍とノルマン側からパリを解放しやってきた連合軍によってベルリンが包囲され、翌日朝にソ連軍がベルリンに入城し、国会議事堂のナチス旗を叩き落し、ソ連国旗が掲揚された。そして総統官邸の地下にはヒトラーと総統婦人の遺体が見つかった。

 総統婦人は頭部を拳銃で撃ち抜かれており、ヒトラー本人はシアン化カリウム、俗称青酸カリを飲み、毒死体で発見された。そして、その日の内にナチス・ドイツ、正式名称を大ドイツ国とする最大領域を北欧まで伸ばした中欧の大帝国はその大きな版図を一瞬にして失った。

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