兵器開発課の活躍

第十一話 移動する要塞

 八月、合同参謀本部兵器開発局員は大忙しだった。硫黄島で活躍したキングチーハーとってかわる新たな対戦車自走砲を開発していた。


 チヌの車体に海軍十二糎高角砲を載せ全周装甲で覆った自走砲の開発を急いでいた。もともとは対艦攻撃用に作成された砲を搭載しているため、AP徹甲弾APCR硬芯徹甲弾APHE徹甲榴弾HE榴弾の発射が可能今確認されている露助のドレッドノート「Kv-2」、ドイツ国防軍のキングティーガー「TigerⅡ」、アメリカのパーシング「M26」、イギリスの黒き皇太子「ブラックプリンス」などの分厚い装甲を持つ重戦車たちをも圧倒的するほどの火力が期待される。そんな戦車だ。火力は申し分ないのだが、問題があった。装甲である。なんせ砲が大きく、重いうえ、40t以内に収めるという要求を満たすため、装甲は2000m先からのM1919機関銃の銃弾に、500m距離からの97式戦車砲の貫徹を防ぐ程度。見た目は完全にヤークトパンツァーのような見た目になった。


 そして試作第一号は日本軍の攻勢も落ち着いた九月初めに完成した。


華北の戦車戦で鹵獲したM1919機関銃と予備役に入っていたチハ、そしてノモンハン事件時に鹵獲していたBT-7を使用し、機関銃による銃撃への耐久性能、BT-7の45mm砲とチハの57mm砲を用いた対砲撃への耐久性、そして噂になっていた海軍十二糎高角砲の対戦車威力を確認するために試験が行われた。


 結果として、試験は大成功だった。チハの砲を500m、そして100mの至近距離で防ぐことができ、何より一番気になっていた十二糎砲の砲弾の威力を思い知ることができた。一度試しに鹵獲したBT-7に撃ち込んでみたところ、砲弾の自重で敵装甲を打ち砕き、貫徹させ、内部で信管が作動し文字通りの「大爆散」を生み出した。内部から砕かれたせいで装甲版が砕け散り、リベットは銃弾の如く飛び、砲身や履帯まで弾け飛ばした。その恐ろしいほどの威力はは試験官を戦慄させた。


「こんなもの喰らったらひとたまりもないな...」


「車体から自分の体まで文字通り木端微塵になるのか」


と。



 そして試験終了から数週間後の九月二十八日総合参謀の認可により

「五式砲戦車 ホト」が正式採用されることになった。そして製造は三菱と住友が担うことになった。


 太平洋とよーろっぱに現れる「せんちゅりおん」と「とーたす」という未確認の戦車にこの自走砲で対抗できるのか、まだそれはわからない。


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