支那大突破作戦(前)

第四話 福健大包囲戦

 地獄の戦争は再び動き出した。六個の戦車師団と十三個の歩兵師団、そして数千機の航空機そして約80万の兵力が一挙に福健に攻勢を開始した。


~午前7時30分頃、福健約6500m上空~


攻勢開始前、包囲されたこの都市のほとんどの人々が会話をしながら食事をしたりしているこの頃、港湾都市福健から数十キロ離れた穀倉地帯上空では、無数の低い轟音が穀倉地帯上空全体に響き渡っていた。


大日本帝国陸軍航空戦隊、四式重爆撃機を主体とした爆撃隊は、福健都市部、沿岸部の方向にV字の編隊を組みながら最大速度で飛行し、爆撃機のパイロット同士で会話をしていた。


「支那の敵地を爆撃なんて初めてだな」


「そうだよな。でも、爆弾で燃え盛る街や港を見るのも悪くはなさそうだぞ」


「おい、もうすぐだぞ。気を引き締めてな。」


そう言うと、爆撃目標の福健に照準を合わせ、あと少しで爆撃隊は福健中心部に到達しようとしていた。

爆撃隊が福健中心部に差し掛かった時、五十キロ爆弾を満載した爆弾槽がゆっくりと開いた。そして…


「爆弾投下用意。5…4…3…2…1──投下!」


その瞬間、四式重爆の下部から大量の五十キロ爆弾が次々に落下し、爆弾特有の風切り音をたてながら機体から空に放たれた。


そしてこの後、爆撃隊からの攻撃によって主要都市のほとんどが瓦礫と焦げた死体の山になろうとしている事を、住民はおろか軍の人間ですら思ってもいなかった。


「ん?なんだあれ?」


朝、港に向かおうとしていた憲兵がそうつぶやく。それと同時にドドドドド...と無数の爆発音と建物が崩れる音が響き、人々の悲鳴が上がった。


街は燃え上がり、道の舗装は砕け剥がれ、爆風で手足をもぎ取られた取られた人や、直撃弾を受け木っ端みじんにはじけ飛んだ人、建物についた火が体に燃え移り黒焦げになった焼死体、倒壊した建物の下敷きになったのか腰から下が無い死体、爆発からかろうじて生きていても大火傷を負ったり、ガラスや瓦礫が刺さり負傷に苦しめられるもの、気管を火傷し、呼吸ができなくなった人など、無事であった福建住民からすれば生きた心地が全くしなかった。


爆撃隊は市街地を燃やしたにもかかわらずまだ燃やしたりないのか福建の港までその巨大な体を風に乗せて移動する。そこでは市街地に爆弾を落とさなかった別の四式重爆がぱらぱらとフランス料理の皿に胡椒を振るように爆弾を港やその近くにある軍事施設にばら撒き、空から陸を蹂躙する。港に置かれていた通商船や駆逐艦、哨戒艇が爆弾の爆発をもろに受けて火柱を上げるか船体を真っ二つに折るかして浅瀬の底に沈められた。軍の指揮施設にも爆弾が命中し、指揮系統は麻痺。重慶に対する連絡手段も失ったため、臨時首都に指定されていた重慶には爆撃を受けた旨の情報は伝わっていなかった。


~午前8時前、前線~


「もう数分で攻勢が始まるのか...ここまで来てなんだが、この攻勢、すぐに終わりそうだな...」


九七式中戦車のハッチから顔を出したのはその車両の車長である和泉いずみ中尉。


「おい、作戦開始が近いぞ。國友くにとも!弾薬は大丈夫か?」


「ええ。満載です。あ、榴弾、入れときますか?」


「いや、歩兵は機関銃でたおせばいい。

 東海林しょうじ!燃料は大丈夫か?」


「はい。燃料満タン、作戦遂行に支障はありません!」


「よし。じゃあ二人とも戦闘配置についておけ。まもなく作戦の実行時間だ。

実行合図は『ニホンホヘイノスイトシレ』だ。いいな」


「「了解。」」


東海林と國友の声がきれいに重なる。意気はばっちりのようだ。


~数分後~


≪-.-. -.. .-.-. -.. . .- ..-- ---.- .- ..-.. --.-. ---(ニホンホヘイノスイトシレ)≫


「作戦開始だ!さあ!鬼畜支那野郎をぶっ潰すぞ!」


~行軍開始三十分~


「よーし、これで三台目いただきだぜ!」


戦車第十連隊は支那軍戦車部隊と遭遇。射撃戦を行っていた。


「徹甲榴弾装填完了!」


「撃てぇ!」


「敵戦車、火を噴きました! 撃破確実です!」


「ヒャッハー! 支那の戦車はアルミ缶以下、ブリキ缶も同然だぜ!まるで中華料理の缶詰だな!」


「車長、変な例えはおやめください。なんですか、豚の脳みそが入ってるとでも言いたいんですかね。まぁ支那兵は無能だと聞きますけど...あ、確かに戦車は脆いですよね」


「よーし、前進するぞ!『パンツ・アホー!』」


「車長...『パンツァー・フォー』ですよ...なんで履物が阿呆なんですか...」


中華民国のT-26は予めすべて長砲身に改装された九七式中戦車改の前ではアルミ缶、いやブリキ缶のように易々と装甲貫徹、撃破され、遭遇戦であったにもかかわらず、戦車第十連隊には一切の被害がなくただただ一方的に敵戦車部隊を蹂躙しただけとなった。


~A few Hours later~


「先行爆撃隊の奴...本気出しおって...戦車部隊の仕事がないじゃないか...」


「車長...仕方ないですよ...駐屯地にまで爆弾刺さったみたいなんですもの...」


和泉が愚痴を吐くと、それに溜息交じりで東海林が返答する。そう。攻勢開始前の先制爆撃にて福健はほぼ壊滅状態になっていた。


別方面の部隊では支那兵との銃撃戦が起こっていた。

敵部隊は都市や山脈で籠城戦をし抵抗を試みるも歯止めのきかぬ敵対心と熱烈な士気が天を打つ歩兵は敵部隊相手に吶喊し強引に撃破殲滅。ハ号部隊を先頭に内へ内へと浸透を始めた。支那兵は脱出を試みるために爆撃によって整地された荒野を駆け港へ向かったが、突如轟音とともに港付近で火柱が上がった。大和や山城をはじめとした聯合艦隊の艦砲射撃である。

陸海空の完璧なまでに連携が取れた作戦に支那軍は各個撃破され、福健周辺に展開していた約50個師団が約一カ月ほどで完全に殲滅された。





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