第三話 合同参謀設立(後編)

「資料は手元に渡ったか?」


立ち上がって確認を取った英機は

「本案は我が日本を太平洋戦争で勝利させるべく行う陸海軍参謀本部の統一化計画だ。そして、これは現陸海軍大臣の二人を中心として行う。

本案の合同参謀本部とは、現在のような軍令部と参謀本部の二極体制ではなく、このふたつに取って代わる陸海の完全なる協力体制のある機関を築き、その二つの上に軍事部門の合同参謀本部を設立する。そしてここでは連立した作戦と装備の研究を可能にすることができるのだ。」


解説は概要からから始まり、彼の説明は機関の細かい区分けや新しい兵器の研究製造の方法、新しい艦船の建造思想や効率の良い建艦方法、兵員の新たな運用思想など様々な説明を続けた。そして、


「合同参謀本部長には私東條英機が、同副本部長は野村直邦が就任し、次期陸海軍大臣には海軍山本五十六、陸軍山下奉文を就任させる予定である。

この案に賛成の者は挙手をお願いしたい。」


彼がすべて説明し終えた後、説明を聞いていたすべての海軍士官、陸軍将校が挙手をした。


「全会一致ということで本案は可決される。いいな。」


最後の確認に、異論を唱える者もいなかった。




「決まったところでなのだが、山下君。支那戦線にはどのくらいの兵力が必要なのだ?」


野村が聞く


「追加で約五十万の兵力があれば完膚なきまでに撃破できるでしょう。」


「そうか...ならば太平洋だけでなく本土からも数個引き抜かないとだめなのか...米国にも段取りってものがあるはずだ。すべてをすっ飛ばして本土を攻撃するなどはありえないだろうからな。参謀総長。どうだ?」


「ああ。本土の部隊の移動を許可する。」


「ありがとうございます。」


「最初の攻撃目標はどこになる?」


「大陸打通作戦時に生まれた福健付近の包囲網の殲滅を行います。かなりの抵抗が予想されますが、総兵力を上げて撃破、東シナ海を利用した脱出や支援も阻止するために海軍に海上封鎖を頼みたいです。」


「支那沿岸など我が海軍の庭のようなものです。どうぞお任せを。」


「ありがとうございます。心強いです。五十六長官。そして、包囲の殲滅後は列車を利用して速やかに北上、北京奪還を狙う敵主力部隊の包囲殲滅を行います。この作戦が成功すれば支那軍は防衛豚を一挙に失うことになりあとはなし崩し的に支那戦線は崩壊し、支那は降伏することとなるでしょう。」


「作戦はよく理解した。陸軍は厳しい戦いになるだろうがこの作戦は戦線を突破するための第一歩だ。全力で、容赦なく叩きのめすのだ。」


「海軍も防衛部隊が極端に減少する。陸軍の作戦遂行中、全力で支援してくれ。」


参謀総長、副参謀総長が士官将校に声をかける。


「これより連合軍に対する反抗作戦を開始する。

 我が帝国に勝利を!万歳!」

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