第8話 可能性

俺にとっての人生初クエスト。

向かうのは、村から丸1日程の距離にある森だった。


「日も暮れたし、今日は此処で野営ね」


サリー達は荷物を下ろし、テキパキと準備を始める。

一応手伝いはしたが、不慣れな俺は帰って足を引っ張ってしまった感じだった。

それでもあっという間にテントが2つ組みあがり――男女別――焚火を使ってサリーが食事の準備を始める。


「手際が良いな」


「がはははは!冒険者だからな」


他の2人は兎も角、力押しごり押しの脳筋野郎だと思っていたピクミンが意外と器用だったので少し驚かされた。

人は見かけによらないものだ。


「はい。食事の準備が出来たわよ」


「お、せんきゅう!」


焚火の前に胡坐で座り。

サリーからお椀を渡された俺は匙で掬って、具少なめのスープを口に運ぶ。

うーん、薄味!

という訳で、俺は自分好みに味を調整したタレを注ぎ込んだ。


「うん!うまい!」


スープは一瞬でピリ辛のキムチ味に変わり、ガツンと俺の舌を震わせる。

我ながら完璧な調整だ。


「スレイン!俺にも頼むぜ!」


ピクミンがお椀を俺に突き付けた。

奴のお椀は特別製で、俺の顔ぐらいある。

そこに俺は駄馬駄馬とタレを流し込んでやった。


「マンマミーヤ!」


それを口にしたピクミンが立ち上がり、唐突にスキップを始めた。

相変わらず大げさな奴だ。


「2人はいいか?」


「手から出て来る様な物は口にしたくない」


カティは相変わらずだった。

食わず嫌いもいい所だ。


「口からも出せるぞ?」


俺はマーライオン宜しく口からタレを出して見せてやる。


「もっといらないわよ!気持ち悪い!」


気持ち悪いとは失敬な……いや気持ち悪いか。

冷静に考えたらそりゃそうだ。

仮にピクミンが口からとんでもなく美味しいジュースを出せたとしても、まあ飲めんわな。


「わはははは!面白いな!それってどこからでも出せるのか?」


「まあな」


このスキルはタレを体のどこからでも出す事が出来た。

自由自在と言う奴だ。

まあ服とかが汚れるから、基本手からしか出さないけど。


「尻から出したら完全に下痢ピーだな!!わはははは!!」


食事中に何ちゅう事言いやがるんだ。

しかも何故かカティは俺を睨んで来る。

これって俺が悪いのか?


世の中理不尽だ。


「馬鹿な事言ってないで、さっさと食べなさい」


「はははは!了解!」


ピクミンはサリーには弱い。

言われて素直に食事を食べだした。

見た目的にはあれだが、やはりこういうのをみると姉弟なんだなと思わされる。


食事が終わった所でお椀にタレを注ぎ込む。

俺はそれを一気に飲み干した。

爽やかな柑橘系の甘みが俺の喉を潤す。


「お!美味そうだな!俺にもくれ!」


言われてピクミンの椀にも注いでやる。

それを奴は一気に飲み干した。


「おお!滅茶苦茶美味いジュースだな!」


ピクミンはその味を絶賛する。

一応ジュースではなく、ジュース風味のタレと言うのが正解だが。


これは俺の努力の結晶だった。


タレを出すだけの能力なのはあれなので、何とか他にも応用できないかと苦闘した結果。

タレを体のどこからでも出せる事が分かり、更に成分や味も調整できる事が分かったのだ。

その気になればジュース所かシャーベットの様に凍らせた状態で出す事も出来るし、成分無しの水分――つまり真水を出す事も出来た。


冒険に置いて水は必需品!

つまり俺のタレ精製は冒険に最適化された能力だったのだ!


因みに水は初級の簡単な魔法で出せるらしく、村のガキレベルでもその魔法は使えるらしい。


うん!ゴミ!

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