第4話 ヘルアーントイーターバスター

冒険者:スレイン・エバラ

SEX:男

職業:焼き肉のタレ

称号:ヘルアーントイーター・バスター


名刺より一回り大きなサイズのプレートを手渡される。

これが俺の冒険者証らしい。


「焼き肉のタレってどんな職業ですか?」


「さあ?存じかねます」


ですよねー。

どう見ても意味不明だ。

まあこれは置いておこう。


「このヘルアーントイーター・バスターって称号は?」


「称号は特定の生物を一定数退治すると手に入る物です。この場合は蟻を食べる虫を一定数倒したと言う証ですね。冒険者として、一種のアピールポイントになる物ですが……まあ何と言いましょうか……」


お姉さんは最後の方の言葉を濁す。

まあ蟻地獄を殺しまくったからと言って、冒険者としての評価には一切繋がらないのだからしょうがない。

と言うか寧ろない方がましじゃないか?

この称号。


「兎に角、これでスレイン様は冒険者として登録されました。以降の活躍を期待しております」


明かに期待感0の棒読みだが、まあ仕方がない。

実際冒険者証に記述されている内容は、意味不明のゴミみたいなものだからな。

つか焼き肉のタレってマジでなんだよ。

こんな意味不明のクラスじゃ人に見せられねーぞ。


女神から力を貰ったせいか?

だとしたら貰わなかった方が遥かにましだった。

碌でもない能力寄越しやがって。


まあ愚痴っていてもしかたがない。

兎に角、冒険者になったのだからまずは冒険だ。


「お姉さん!さっそく仕事したいんですけど!」


「お仕事ですか?焼き肉の……じゃなかった。新人の方に案内できる物は今の所ございませんので」


今焼き肉のタレって言おうとしやがった!

明かに職業差別だ!

まあタレに勧められる仕事って何だよって聞かれると、俺も答えられないけど。


「俺今無一文なんですよ!何でもいいから仕事をお願いします!」


仕事がないのは困る。

現代っ子の俺には、飯抜き青空素泊まりはきつすぎて耐えられない。


「そう申されましても……」


「待ちな!」


急に受付のお姉さんとのやり取りに待ったが入る。

声の方に振り返ると、ザンギ……じゃなくてピクミンが階段から降りて来た。


「お前さんの身柄は、この俺が預かるぜ!マスターに頼まれたからな!」


ピクミンは親指を立ててニカッと笑う。

その姿は正に頼れる男と言った感じだ。

まあ土下座して違約金がどうたらこうたら言ってたので、多分見掛け倒しのポンコツだろうけど。


「お前さんはこの世界に来たばかりで右も左も分からないだろうから、世界の常識と冒険者としてのノウハウを俺が叩き込んでやる」


少々不安の残る相手ではあるが、色々教えて貰えるのは有難い話だ。

冷静に考えて、常識も知らずに動き回るのは余り宜しくないからな。


「じゃあまずは飯だ!肉を食うぞ!肉を!」


「いや、俺無一文なんだが?」


「心配するな!金ならある!わはははは!」


金があるってんなら、じゃあ何でさっきは土下座してたんだ?

一瞬疑問に思ったが、まあ違約金がとんでもない額だったという事なのだろう。

何せジャンピング土下座した位だからな。


「えーっと、名前は何だっけか?」


「スレインだ」


「スレインか!じゃあ肉を食いに行くぞ!」


ピクミンは俺の背中を豪快に叩く。

その強烈な衝撃に、顔面から地面にダイビング。

超いてぇ。


「おいおい。色々教えてやるからって、別に俺に土下座なんてしなくてもいいんだぜ」


「してねぇよ」


脳筋肉達磨め……

まあ飯を奢ってくれるようなので、今回の件は水に流してやるとしよう。


「じゃあ行くか」


「あ、こら!?何しやがる!?下ろせ!!」


起き上ろうとすると、ピクミンに片手で持ち上げられ肩に担がれる。

急な事に驚いて俺はじたばたと足掻くが、奴の筋肉にがっちりホールドされて抜け出せない。


「照れるな照れるな!わはははは!」


この状況で照れるってどんな感情だよ。

純粋に嫌がってるだけだ。


だがそんな俺の様子など気にも止めず、ピクミンはずんずんと大股で歩きだす。

そんな奴の圧倒的なパワーの前に、俺は成す術もなく連れていかれるのだった


「おーろーせー!」


ファッキュー!

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