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その言葉を発したとたんに、一行全員の動きが凍りついた。さっきの若者と同じだ。
「その世界では、こんな風に力を持っていなかった」
自分の周りの人々が動かなくなったことに気づいているのかいないのか、勇者は言葉を続けた。
「毎日毎日、同じことの繰り返し。強い者にへつらい、弱い者をさげすんで、同じ程度の者どうしで怒りや苦しみをぶつけ合い、押しつけ合い続けてきた」
黙っていると、さらに話は続いた。
「たぶん、あんたが繰り返し出会ってきたのは……」
そうだった。そのことが聞きたい。
「俺と同じようにこの世界に来た人間だろう……」
さらに唇が動いて、何かを話そうとした。
その瞬間、今まで微動だにしていなかったつば広帽の女が言葉を発した。
「ここはそろそろ終わりよ、次に行きましょう」
勇者は、目が覚めたようにきょろきょろと周囲を見渡すと、女に向かって深くうなずいた。
勇者が階段を降り始めると、一行も荷物を持ち、群衆の脇で待機していた数頭の馬と馬車の方へと向かいだした。
いや、今を逃したらいけない。そう頭の中でささやく声がした。
「待った。どこへ行くつもりだ」
勇者はゆっくりと振り返り、さっきの苦しそうな表情に戻った。
「次のクエストだ」
やっと答えてくれた。
続けてたずねる。
「何のために、どうやってこの世界に来たんだ」
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