第4話  存在と位置

 ”ジーー”


「・・・・」


 ”ジーー”


シロは神妙な顔つきでクロの顔を見つめる。

クロはいつもながらシロの一挙一動を楽しむが、ここまで見つめられると流石にいたいたまれなくなって、シロに尋ねた。

「なんだ」

「ねえ」

「だからなんだ?」

シロは神妙な顔を崩さず、クロに問いかけた

「あたし達、何故ここにいるんだろう?」

クロはこの問いに素っ頓狂な声を上げた

「ほへ?・・・何言っているんだ。ここにいたいからだろ」

「何でここにいたいの?」

クロはしばし考えた末、言葉を紡いだ

「どうせ大した理由は無い、考えるな」

シロはジーッとクロを見つめた後、尋ねた

「ねえ」

「なんだ」

「なんであたし達ここにいるんだろう?」

クロは食い気味に答えた

「なんでシロはここにいるんだ?」

シロはちょっと考えた後、語気を強めて答えた。

「それが分からないから聞いてるの!」

クロは少し呆れ気味にシロに尋ね直す。

「つまり自分の存在価値を聞いているのか?」

相変わらず、意想外の言葉を聞いた時のシロの顔が楽しい。

そう思いながら、シロに言葉を投げかける。

「我思う 故に我あり」

シロは一瞬考える素振りを見せるが、すぐさま切り替えてクロに答えを求めた。

「何それ?」

クロにしてはつまらなそうに、シロに説明をし始めた。

「考える故に自身は世界の中心に位置する。故に世界は自身を中心に膨張拡大するって小賢しい考えだ」

「だから考えるな。世界の中心は唯一じゃない。もし、お前が世界の中心ならあたしも世界の中心だ。中心の定義があやふやになる」

「なんかすごくバカにされた様な気がする」

釈然と出来ずぼやくシロを後目に、クロは言葉を続ける。

「だからそうなるんだよ」

「自身を主張するあまり中心を唯一と考えてしまう。自身の視点でしか世界を見ないから、いつだって中心にいる錯覚を起こす」

ゆっくりと弧を描く様に歩きながら、シロの前に回り込んでクロは言い聞かせる。

「そう錯覚なんだ。だから他の方向からの視点を考えてみろ」

上目遣いにクロを見上げながら、シロは尋ねた

「どういう事?」

「お前を見るあたしの目に映るものはなんだ?」

「あたし」

「それが答えだ」

二人は腰掛け、シロは与えられた答えを読み解こうと努力する・・・が

「意味わかんない」

「お前もあたしも所詮、目に映る影に過ぎないんだよ。」

「世界とはそんなくだらない思考の堆積だ」

「そうくだらない思考が書きなぐられた落書きがあたしらなんだ」

”ペタペタ” 

クロは突然シロが自分の胸をまさぐりだした事に固まる。

「つまり可愛いクロちゃんの顔は本体じゃなく、そのペタンコな胸が本体なのかも」

「お前の目は、まだ今より過去しか見えないのか」







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る