第30話
◇ PM2:20
交差点で信号待ちをしている間中ずっと、無闇に駆け出したい衝動に駆られ、レイはそわそわと体を動かした。
カイ、たくさん喜ぶかなあ。
想像するだけで心がふわふわするようで、両手に包み込んだカプセルを再びそっと覗く。と、そのとき、どん! と、背中に強い衝撃を覚えた。背後から不意にぶつかられ、しかも手が塞がった状態でバランスを維持できず、そのままカプセルを前方に取り落とす。
「あ!」
それは数十センチ先に転がり落ちて弾み、再び地面に落ちて、カラカラと乾いた音を立てた。
車道に躍り出たカプセルを身を乗り出すようにして取り押さえ、立ち上がろうと顔を上げたそのとき、通りの反対側の角に、カイとリサがいるのが目に入った。スクーターに跨ったカイに促されて、リサが彼の肩に手を置いて後ろに座る。すぐに2人は走り去り、見えなくなった。
その瞬間、けたたましいクラクションが響いた。車道に乗り出したレイに、突然で近過ぎて安全制御装置も十分に作動しなかったのか、大型バンのの運転手が必死の形相でブレーキを踏みハンドルを切ろうとしていた。
子どもは音に驚いて凍りついたように動かなくなり、次の瞬間、ハッとしたようにバンを振り返った。
近い、間に合わない―!
次の衝撃を予測し、ぎゅっと眼を閉じた。刹那、後ろに思い切り引っ張られ、同時に手からカプセルが離れるのを感じた。
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