第19話

◇ PM2:50


「お外、行ってきます!」

 そう告げて飛び出すと、背後からミナの慌てた声が追いかけてきた。

「え? レイちゃん、どこ行くの? お買い物ならおねえちゃんと一緒に…」

 だが、自分の思いつきに夢中になったレイに、その声が届くことはなかった。


 できる限りの急ぎ足で目的地に向けて進みながら、レイは、数日前のカイとのやり取りを思い返す。


        ***


「ほら」

 ソファの端にちょこんと座って本に夢中になっているレイにそっと近付き、カイはその鼻先に小さなプラスチック製の人形をぶら下げた。

「なに?」

 きょとんとした様子で、目の前のロボットのような人形を、続いてカイを見る。

「知らないか? デュアルシリーズのミニフィギュア。ダブッたから、やるよ。ガチャポンで出したんだけど、それはもう皆が持っているし」

「ガチャポン?」

「ああ、このくらいのカプセルが出てくるやつ」

 片手でカプセルの大きさを示しながら、レイの手のひらにその人形を載せる。

「全部で15種類あるんだけど、あと2つ、レア度No.1とNo.2が揃わなくて。大人げないっちゃ大人げないんだけど、なーんか、みんなムキになっちゃってさ。これは一番たくさん出るやつ、なんか、お前に似てるよな」

「えぇ?」

 呟きながら、人形を眼の高さまで運び、レイはしげしげとそれを眺めた。


 そう、あの人形の仲間のレアアイテムとかいうやつ。あれは、このお金で手に入れられるかもしれない。もしそうなら、あげたらカイはきっ、喜んでくれるだろう。

 照りつける日差し、うだるような暑さの中、レイは海辺に向け懸命に走り続けた。

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