第35話  雨宿り

 雷の恐怖から立ち直ったガラグ達は馬を必死に宥めていた。


 20分程すると激しい雷雨がピタリと止み晴れ間が見えてきて、ガラグが


「そろそろ大丈夫そうだな。ダイスをそのままにするのも可愛そうだし、一旦この岩場まで連れて来よう」


 皆項垂れて大輔が横たわっていた場所に向かうが


「あれ?確かこの辺だったよな?」


「どうして?まだ魔物がいてダイス様を連れ去ったの?せめて最後のお別れをしたかったのに」


 クレールは先程まで大輔が横たわっていた場所に崩れ落ちた。


 しかし、程なくして大輔の馬が大輔の服の襟首を咥えて引きずって来た。


「おお!でかしたぞ。お前は主人想いの忠馬だな。よし岩場まで連れて行こう」


 ガラグが近付くと大輔の馬は威嚇して拒否し、大輔を上に放り投げた。すると見事に鞍に乗り岩場まで移動する。


 岩場まで来るとしゃがんで丁寧に大輔を地面に転がした。


 顔を舐めていたがその様にケイトとクレールが涙していた。


 大輔を馬に任せ、皆は剣を使い穴を掘り出した。途中で一人加わり必死になり6人で穴を掘っていた。6人で・・・


「所で何の穴を掘ってるんだい?」


「今更何言ってるんだ?死体を埋めてやらなきゃだろ」


「死体って60体以上あるからでかいのを開けなきゃな」


「あれらは放置で良いぞ」  


「そっか?あのでかい奴の穴か?」


「違うぞ。あれは後で魔石と耳を切り取ったら食べるんだよ。オークのリーダーは旨いからな」


「へーあれは食べられるのか?」


「なんだ喰った事ないのか?特に睾丸が旨いんだぞ!精力が付くぞ」


「そんなん喰うのあんただけだよ」


 皆が笑っていた。


「まあ冗談はさておき丸焼けになっているから直ぐに喰えるな。一休みするか。嬢ちゃん悪いがウォーターボールの弱いのを皆に頼む」


「じゃあこの鍋に頼むよ」


 そうやってガラグは鍋を受け取り、ケイトからのウォーターボールをキャッチし、自分を含め6人の手を洗う。


 魔石と両耳を切り取り、袋に入れてからオークのリーダーの肉を切り分け皆で食べる


「あっ!まるで豚肉だな。旨いなこれ!」


「そりゃそうだ。雑魚の5倍位の値段だからな。アイテムボックスがあれば残りを持っていけるんだがな」


「そっか。じゃあ俺が持っておくよ」


 目の前から忽然とオークの死体が消えた。その様を見ていて


「やっぱりそれ便利だよな」


 渡されたパンを食べながらトーマスが羨ましいそうにしていた。


 不意にケイトとクレールが今更だが叫んだ


「えっ!まさか!」


 と同時にハモリ


「何故ダイス様が?」

「なんであんたがここにいるのよ?死体は死体らしくしてなさいよ!」


「こらこら人を勝手に殺すなよ。それより本当にあの穴はなんの為に掘ってるんだよ?落とし穴か?」


 両脇から大輔は抱きつかれ泣かれていた。


「あんたを埋葬する穴よ。生き返ったんなら生き返ったってちゃんと言いなさいよ」


 ツンデレなクレールはが可愛いなとつい思う大輔だ。


「えっ!俺が死んだって?嘘だろ?ってお前まだ奴隷にしたままだったな。まじかよ。嘘は言えないもんな。ちょっと待ってろ今更だけどさ」


 大輔はクレールのお腹をめくり手を添える。


 クレールが短く「きゃっ」と悲鳴を上げていた。


 大輔は


「よし、奴隷解除したからな。美少女に殺されるのも一興だけど、出来れば諦めてくれると嬉しいな。それよりクレール、お前そんなキャラだったか?俺の事お前って言ったり、ダイス様って言ったと思ったら次はあんただよな。まあ俺も嫌われたもんだな。好きになれとは言わないが、せめて仲間になって欲しいんだ。美少女に嫌われていると結構ダメージがデカイんだよな」


「ダイスのばか!人の気も知らないで何よそれ?あんたなんか死んじゃえばよかったのよ!」


「この朴念仁」


 二人に責められ、更に左右をぶたれりる大輔は乙女心を理解出来なかったのであった。

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