第34話  終戦と死と

 大輔はスキルを持っているが、あくまで技術があるだけで基本的に戦い方を知らない。暗闇でのファイヤーボールは愚策以外の何物でもなかった。敵は気配や匂い等で大体の場所を把握して襲ってきていたが、ファイヤーボールを放った為、発生地点にターゲットがいると教えているようなものだ。というより教えていたのだ。


 ブヒブヒと変な鳴き声?叫び?が聞こえていて、どんどん集まってきて、大輔は何故か自分の方に向かってくる奴らに恐怖を覚えていた。恐怖で走りながらというより逃げ惑いながらがむしゃらにファイヤーボールを放ち、死屍累々を築き上げてはいた。時々雷に撃たれ、何かを取得していたが戦闘中でよく分からなかった。


 大輔は剣を持ってはいるが、暗闇から突如目の前に現れた奴に対して対処が遅れたのだ。ファイヤーボールを放ったは良いが、棍棒の一撃を頭に喰らい倒れる。相打ちだった。


 意識が朦朧としていたが、他の個体より一回り大きな奴が現れ棍棒を振り上げていたが、何とか最後の気力でファイヤーボールを放ったが気絶してしまった。ファイヤーボールはそいつを丸焼きにするのには十分の威力だった。


 大輔が倒れた直後位から周りが段々と明るくなってきた。


 ギランがいつの間にかいなくなった大輔が倒れているのを見付け、体に棍棒を打ち付けていた奴にナイフを投げて倒した。


 馬の周りも何匹かが襲っていたが、ケイトは大輔とクレールの馬だけは解き放ち、他の馬を必死に宥めていた。

 クレールと大輔の馬は脚で攻撃して倒していた。

 襲ってきていた奴らは身長はケイト位で小さかった。


 程なくして全てを倒したクレール達は、すっかり明るくなってきたので何に襲われていたか漸く分かったのだ。

 60頭位のオークの集団だった。


 100m程離れた所に倒れている大輔を見付けたケイトとクレールは取り乱して大輔に駆け寄る。


 雨に打たれてぐったりしているから慌てた。大輔は息をしていなかった。


 クレールはその場で大輔の心臓を何度も叩いていた。また、ケイトが弱いながら回復魔法を使えると言い、傷を治す。しかしながら蘇生の力は持っていない。彼女は元々神殿に拾われた神官見習いですらなかった。


 段々と大輔の目から生気が失われていく。


「何やってるの?あなたにちゃんとお侘びをしたかったのに。初めて好きになった人がこんなに簡単に死ぬなんてやだよ。生き返りなさいよ!中途半端で逝くなんて許さないんだから!私を女にしたんだからちゃんとした女になるのを見届けてよ!戻りなさいよ!」


 クレールは人工呼吸までしたがついに大輔が息を吹き返す事は無かった。


 泣き崩れるケイトとクレールをガラグが大輔から引き離した。


「残念だがもう駄目だ。折角生き残ったのにな。せめて埋めてやろう。今は一旦退避だ」


 びしょ濡れだから一旦岩の下にクレールとケイトを連れて行く。唇が真っ青で今にも倒れそうだったからだ。また雷が近くに落ち始めていて、危険だからだった。


 岩場に着いた途端にクレールとケイトはお互い抱き合ってダイスが死んだと嘆いていた。


 皆は気が付かなかった。大輔の手からダイスが溢れ落ち、100を向けていた事を。


 そして雷が近くに落ちてその音と振動で皆恐怖に頭を抱えるのであった。


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