第32話 野営
とりあえず皆で質素な夕食を食べる事になった。緊縛した状況でも腹は減るし、食べないと体力が無くなるからこんな状況でだからこそしっかり食べる必要がある。
パンと戻した穀物それと干し肉だ。
食事をしていると今後の事について話し合うことになった。
先ずは誰がリーダーをきめることになったがケイトが手を上げて真っ先に発言した
「はい、リーダーはダイス様しかいません。ダイス様は異世界より召喚されし勇者様です。なのでダイス様なんです!
皆あんぐりと口をポカーンと開けていた。それもその筈なのだ。
勇者とはこの世界では英雄である。少なくともかつて存在した勇者は英雄であり、この勇者が行なった行いによりその後の勇者も尊敬される存在になっている。
皆心当たりが有った。大輔の戦い方は一般の者のそれではない。魔力にしてもそうだ。魔法の威力が段違いであり、詠唱をしている所を誰も見た事がない。特にクレール新名な顔をして、少し震えていた。
リーダーは大輔が抗議するも皆からジト目をされるかたちで却下されあっさり決まった。今後の事を話し合うのだが、とその前にガランとトーマスの首に首輪があるのを思い出し奴隷解除を行った。
この二人もそうだがガラグも大輔がそんな力を持っているので驚いていた。ガラグは大輔に質問をした。
「なあ、どうして自分の奴隷化を解除しなかったんだ?」
「あーそれは奴隷の首輪によって俺の力が封印されていたからだよ。その力を使ってすでにケイトは奴隷じゃなくなっているんだ」
「なるほどな。嬢ちゃんの話わかったが、このお姉さんは何者だ?驚いたが剣の腕はトーマスやギランよりも上じゃないか!」
「彼女はそうだな本人から説明させよう」
手を挙げて発言を求めているクレールに説明させる事にした。
「まず現在は私はダイス様の奴隷となっております。私が何者かという事ですが、かつては騎士ジェームズと呼ばれ、先の新人戦ではダイス様と決勝を戦いそこで命果てましたが、ダイス様により生き返らせて頂きました。しかし、生き返らせて頂いた直後に町が襲われ、一緒に逃げ出しダイス様に従っております。
私が決勝でダイス様の命を狙ったにも関わらず、ダイス様は私を許してくださりました。このような寛容な方は滅多におりません。私は我が主であるダイス様に身も心も捧げる所存であります。今はダイス様よりクレールという名前を頂きました。以後クレールとお呼びください」
大輔は口をパクパクしていた。先程まで大輔の事を貴様呼ばわりし、蘇生してくれた事には感謝をするが、奴隷として命じられた事には従うが、心から従う事はないような事を言っていた。
それなのに今は大輔の事を様付けで呼んでいる。今思うとケイトが大輔の事を召喚勇者だと説明していたし、道中ケイトとクレールが話し込んでいたりしていたので、ケイトから聞かされた話しによりクレールの心変わりがあったのだろうとは思うが、こうまで明らかに変わってくると大輔も戸惑うものであった。
そして野営といっても6人全員がテントの中で寝る訳ではない。見張りが必要なのだ。これに関してはガラグにお願いした。ガラグが皆の強さを一番良く分かっており、見張りの班分けをしてもらう。2人一組で3組に分ける。最初のがクレールとギラン。真ん中がガラクとトーマス。そして最後が大輔とケイトである。一番体力のあるガラグがトーマスと共に一番きつい真ん中を引き受けてくれる。特に大輔とケイトは慣れていないだろうからと体力的に一番劣っている2人を早々に寝かせる事にした。
ギランとクレールは訓練されているのでそれなりに体力はある。
片付ける者は殆ど無いので各自馬の世話をし、見張りの者とテントに入る者に別れた。そしてテントの外ではクレールがキに
「一応言っておきますが、私に触れて良い男性はダイス様だけです。なのでもし私に不用意に触れるような事があればそれなりに覚悟をもって下さい。後悔させます」
「ははは。気の強い女だな。心配するな、人の女に手を出す殆ど落ちぶれちゃいねえよ。お前ダイスの事が好きなんだろ?他人の事を思う女なんか抱けるかよ。尤もお前なんぞ襲った日には噛み千切られるのがオチだろう。くわばらくわばら」
「ならば良いが、そうそう一つアドバイスをしておく。ギラン殿の剣は・・・ 等々クレールとギランが鍵の剣使い方などについて話し合っていた。
そしてテントの中であるが、かなり快適になっていた。何せ部屋にあった物を一切合切持ってきたので、布団が一式入っていたのだ。人数分の毛布を買ってあるので、毛布を重ねいるので、厚みが本来よりかなりあり、ガラグとトーマスはそこで寝る。勿論ケイトと大輔は布団の上だ。ガラグは呆れて
「お前そんな物まで持って来たのかよ」
ガラグはそう言い半ば笑っていた。布団の方は半ば呆れていたが、今何を持っているかの話になった。お金の方は新人戦の優勝賞金500枚の金貨があった。これだけあればこの人数が1年は遊んで暮らせると言う。なので当面の軍資金には困らない。この先どうしていくかという事をちらっと話をしていたが、まずは安全な所、つまりこの国を出て隣の国に逃げ込まない限り戦争に巻き込まれる可能性が高い。幸いお金には困らないので今後の事は国境を越えてから話そうという事になったのであった。ガラグがお金の事を申し訳なさそうに言っているから、大輔は自分一人では生きられないから気にしないでと返していた。
そして疲れから大輔とケイトは早々に眠りに落ちるのであった。
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