第12話  第3戦へ向けて

 今日は大輔がメインだった。 


 ダリルの復讐戦とタイトルが付いていたのだ。

 相手はダリルの兄らしい。

 勿論大輔は殺られる下馬評だ。


 これからはガラグや他の座の者達と訓練だ。


 大輔はまだ殺し殺される覚悟がなかった。


 しかしケイトの為に新人戦に出る為に必須な勝利だから必死になろうとしている。少なく共練習では実力者に見える動きだ。但し序盤だけ。


 相手が騎士と聞くとガラグから盾の内側にメイスを仕込む様に言われた。多分フルプレートメイルだからブロードソードでは歯が立たないと。打撃が有効だと言われ、メイスの使い方を教えられた。


 午前中に訓練をし、昼からの勝負に挑む。

 やはり皆からは短期決戦をと言われる。上半身の鍛錬は明日からで新人戦迄に少しは鍛えるという。


 一時間位時間が有ったので浴場で軽く汗を洗い流した後、ケイトにマッサージを頼んだ。


 ケイトは必死に、丁寧に甲斐甲斐しく大輔の世話をする。いつの間にか大輔も生活をケイトに委ねていた。ケイトも大輔の世話をするのが好きだった。大輔は常にお礼を言ってくれるからやり甲斐があった。ただ、闘技に行った後にただいまを言われた事が無いのが辛いが、今日こそは自ら歩いてちゃんとただいまを言って欲しかった。


 ケイトは大輔が自分を女性として見てくれないのを悔しくも感謝していた。家族として大事にしてくれるからだ。


 ケイトの心境は複雑だった。かつては美少女ともてはやされたが、今では醜女と言われる。大輔は自分の事を綺麗な可愛らしい娘だと言ってくれるが、決して抱こうとはしない。その為不安だった。優しくしてはくれるし、服も気にしてくれていた。座長にケイトの事を自分の女の体を他の奴に見られたくないからちゃんとした服を買って欲しいと頼んでさえいた。嬉しかった。大事な所を見られていたと知らなかった恥ずかしさもあるが、彼を信じて尽くそう、付いていこうと更に大輔の事を愛していく。


 そんなケイトの気持ちを知ってか知らずかいつの間にか大輔はいびきをかいていた。ケイトが仰向けにしても起きなかった。


 争いのない平和な国にいたと、戦った事などないという。確かに手は綺麗だった。


 戦った事が無いのに連戦だ。きつい筈だがケイトには弱音を吐かない。


 そんな大輔の寝顔を見ながら頬を突っつき


「私が好きっていうのが本気だって気付かない鈍感さん。いつかダイス様から私の事を愛してるって言わせるんだから。傷が本当に治ると良いな。夢を見させてくれてありがとう。私の勇者様」


 ケイトは大輔の言っていた上級回復魔法の事は信じていなかった。一瞬治ったらどうしようとか、大輔が女として見てくれるかな?と考えを巡らせ、辛さを忘れていた。しかし今を生き抜く為に期待を持たせてくれたんだ、でも残酷だなと思っていた。大輔が抱いてくれて、文字通り女にしてくれたら惨めな娼館送りだけは回避されると思っていたのだ。


 大輔が寝ている間に自分のお昼と大輔のお昼を食堂に取りに行っていた。大輔が起きる前に自分は食べておく。起きたら着替えやらで時間が無くなるからだ。


 大輔の3戦目の時間が迫っていたのでケイトは大輔を起こす。


 食事をさせ、鎖帷子を装着する。大輔は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるケイトに感謝している。ケイトが好きだ。但し妹扱いでだ。なので行ってきますの時はおでこにキスだ。


 ケイトは部屋か練習場の座の待機所位しか居場所がない。


 これから1時間もすれば試合は終わっている。ただただ無事に戻る事を祈るだけだ。


 他の剣闘士の女=奴隷達が集まる場所が苦手だった。一度行ったが二度と行きたくは無かった。主人との性行為の話が多く、卑猥な事ばかりだった。話しているのは殆どそれ絡みなので嫌だったのだ。


 そうしていると大輔の出番になり、扉を開き試合に赴くのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る