第96話:魔人戦決着
拮抗する両者の技と技の衝突。
しばらくしてその均衡が崩れ、レイドの攻撃がシュトルツの放つブレスを打ち消した。
「ナンダトッ!?」
シュトルツは驚愕に目を見開いて叫んだ。
レイドは拳に黒炎を纏わせ懐へと潜り込み、腰を深く落とした。
「俺が引導を渡してやる。精々魔人化したのを悔やむことだな」
思いっきり拳を振り抜いた。
中途半端なダメージを与えると再生されてしまうため、本気かつ黒炎で対策をしての攻撃だ。
――ズドンッ
今まで以上に重く鈍い音が大気を揺らした。
レイドの放った拳はシュトルツの腹部に大きな穴を形成した。
「グッ、ガァァァァッ……!」
再生しようとしているが、黒炎が纏わりつき体を内側から燃やしていく。
「無駄だ。再生は追いつかない」
「我ガ、全テヲ、蹂躙スル、ノダ……絶望、ヲ……」
少しずつ魔人化が解けていき、今までのシュトルツへと戻っていく。
決着が着いた。そう判断したレイドは限界突破を解除した。
同時に魔人化が解けたシュトルツの体の中心には大きな空洞が……
そこからは大量の血が流れ出し、じきに死ぬ事は確実だった。
「た、助け、て……こんなはず、では……」
シュトルツがレイドの方を見て、残る力で腕をレイド方へと伸ばし助けを求める。
「……助けて欲しいか?」
「あ、ああ。助けて、くれ……! なんでも、なんでもやるから」
「ああ、助けてやる」
レイドのその言葉に、シュトルツは薄らと笑みを浮かべた。
何故、レイドはシュトルツを助けると言ったのか。
それは――
「じゃあ最初に対価を要求しようか」
「なんでも、言え、用意、する……」
「助ける代わりに対価としてお前の命を頂くとしよう」
「……は? え? 何を言って……」
――生きられるという希望を持たせ、寸前でそれを断ち切り絶望に変えたかった。ただそれだけのためにレイドは言ったのだ。
当の本人であるシュトルツは、理解ができないといった表情をしている。
「聞いていなかったのか? 対価はお前の命だ」
絶望の表情をするシュトルツ。
逃げようにも体に力が入らないシュトルツは逃げることができない。
地面に刺さる魔剣を抜き、一歩、また一歩と近くレイド。
近づくに連れてシュトルツの顔が恐怖で歪んでいく。
そして目の前に立つ。
「た、助け、て……死にたくない。死にたくない。死にたくない!」
「ああ、助けてやるよ。対価はお前の命だがな」
「やめ――……」
レイドはシュトルツへと
「あ、あづいぃぃぃ! 助け――……」
焼ける痛みに苦痛の声を上げるシュトルツだったが、その声は次第に消えていった。
残るのは人が焼ける臭いと、崩壊した王都であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。