第93話:真の魔人Ⅲ
動いたのは同時だった。
互いが消えた。
そう錯覚するほどの速度。
キンッと魔剣と邪剣が斬り結ぶ。
一撃一撃の衝撃波で建物が崩壊していく。
レイドとシュトルツの戦闘の影響で、王都半分の建物が倒壊していた。
「ぐっ」
斬り結ぶに連れて、レイドから苦しい声が漏れた。
流石に限界突破を使わなければ、これ以上は戦えないと考える。
だからレイドは自身の限界を超えるためのトリガーを口にする。
「――限界突破」
レイドから魔力が噴き上がる。
限界突破をした時の衝撃波が、周囲の瓦礫を円周状に吹き飛ばす。
「……それが本気か?」
レイドから只ならぬ雰囲気を感じ取ったシュトルツが、そう訪ねた。
「まあ、そうなる」
まだ極限突破という奥義にも似たモノは存在するが言わないレイド。
静かに見つめ合う両者。
そして動いた。
シュトルツの膨大な魔力を込めた魔力弾が、雨のようになってレイドへと放たれた。
レイドが魔剣を振るい弾き、あるいは回避して迫る。
弾幕の中を迫るレイドにシュトルツが魔力弾を放つのを中断し、斬撃を放つ。
それすら僅かな動作で身を捻り回避する。
だが二つ目の斬撃を避ける事が出来ず、魔剣にて受け止め打ち消した。
数メートル後ずさるレイドに、一瞬のうちに接近したシュトルツが斬りかかった。
「――なっ!?」
シュトルツから驚きの声が上がった。
レイドがその場から消えたからだ。
否。シュトルツがレイドの動きを捉えきれなかったのだ。
「――ッ!?」
邪剣を持つ右腕が宙を舞った。
シュトルツの切断された腕からは血は出ていない。
だが何故か腕が再生しないのだ。
そこで次に、接近し右から袈裟斬りにするも、避けるシュトルツ。だが、これはレイドによるフェイントだった。
一歩下がるシュトルツの左腕へと斬撃を飛ばした。
左腕はそのまま切り落とされ、再生した。
だが、右腕は再生しない。
(もしかして、あの聖剣の影響か?)
再生しない原因を考える。
シュトルツを見ると、平然としていた。
「どうした? 来ないのか?」
「……」
レイドは答えない。
代わりにとある言葉を紡いだ。
「――黒炎」
すると魔剣バハムートに、黒い炎が纏わり付いた。
黒い炎が纏わり付いたのを見て、訝しげな視線を向けるシュトルツ。
「何をしても再生する。無駄だ」
「そうか?」
レイドは一瞬で接近しシュトルツの左腕を切断した。
切断された左腕は黒い炎によって燃え尽き塵となり、シュトルツの斬られた場所には炎が。
「ふん。この程度すぐに再生して――なっ!?」
驚愕の声を上げるシュトルツ。
それは切断面が燃えているだけで、いくら待っても再生しないからであった。
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