第85話:シュトルツを探すはずが・・・

 レイドが宝物庫に行こうとしたとき、フランが尋ねてきた。


「そう言えばあの勇者の娘はどうするのだ?」

「ああ、そのことか。後方に置いてきたんだっけか」

「そうじゃな。殺すのか? 妾はどっちでも良いが」


 どうでもよさそうに答えるフラン。


「そうか。だが、先ずはシュトルツを見つけるのが先だな。俺は奴に散々やられたからな。借りは返さないといけない。他にも王の家族が居たが、娘はまだ小さかったはずだ。見逃しても痛手にはならないだろう」


 王の逃げた家族を見逃すレイド。

 それは後から何をされようと、殺せば良いだけだなのだから。

 何もやられてはいないので、レイドに復讐の意志はない。


「じゃな。では数人をレイドに預けよう」

「わかった。行って来る」


 そうして数人を引き連れてレイドは宝物庫へと向かった。


 だが宝物庫の扉は開け放たれ、中にあった幾つかの物が持ち出されたあとだった。


「ここに何があったのか知っているのか?」


 一人の魔族がレイドへとそう尋ねた。

 魔族の言葉にレイドは首を横に振った。


「知らないな。丁度いい。宝物庫の中は全て持っていくか」


 レイドの言葉に賛成する数人の魔族。

 収納魔法に宝物庫の中を全て仕舞うと、そのまま宝物庫を後にした。


 とりあえず城内を探し回ることに。


 探し回ること数分。

 シュトルツの姿は見当たらない。


「何処に行った? レイド、何も知らないのか?」


 疑いの眼差しを向ける魔族。


「知らん。隠し通路を使って逃げた可能性もあるが、ならなぜ宝物庫に入ったという話になる。何も無いはずだが……」


 考えるも何も思いつかないレイドは一度、フラン達と合流することにした。


 すぐに合流するが、フラン達も見つけられなかったようだ。


 使用人たちは隠れていたようで、聞いても知らないようだった。


 とりあえずだが、王城は落ちたのだ。

 復讐したい気持ちがレイドにはあったのだが、王都を陥落させたことで良しとしようとしたその時だった。


 とてつもなく膨大な魔力反応があった。


 一斉に臨戦態勢となるレイド達。


「何が起きた!」


 フランが配下へと尋ねた。


「ふ、不明です! 一度外に出るべきかと……」

「そうじゃな」


 配下の言葉にレイド達は素直に頷いた。

 中にいても出来ることは無いだろう。


 外に出た方が状況の把握も出来るからであった。


 そうして外に出たレイド達の目に飛び込んできたのは、王都上空にて禍々しい気配を放つ――シュトルツの姿だった。





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