第24話:リリスの死霊魔法講座

 魔王城を出て王都の外へと出たレイドとリリスは現在、王都近郊の森を歩いていた。

 目指すのは暗黒山脈の山頂だ。


 レイドとリリスの間に目立った会話はない。

 それはたんに話す事が無いからである。


 リリスは元々口数が少ない。レイドも同様に会話は少ない。

 両者が共にいればこの結果は必然であった。


「……レイド」

「どうした?」


 珍しくリリスの方から話を振ってきた。


「他の魔法は覚えないの? レイドは才能がある。私が保証する」

「そうか。それは良かった。暗黒山脈までは時間があるし教わってもいいか?」

「ん、構わない。だけど……」


 リリスが立ち止まるを見てレイドも立ち止まった。

 そのままリリスはレイドの方を見て言葉を続けた。


「魔族を殺さないと約束できる?」


 なんだそんなことか、と思いながらもリリスの問いにレイドは真剣に答えた。


「ああ、約束しよう。だが確実に殺意をもって殺しに来たら、その時は――」

「殺しても構わない。それは自業自得だから」

「なら約束しよう。そもそも俺は魔族の味方だがな」

「ん、私はレイドを信用する」


 そう言ってリリスは山脈に向って歩いて行ってしまった。

 徒歩での移動は二週間近くかかってしまう。

 帰りも面倒だと思いながらも、レイドはリリスの後を付いて行くのだった。




 歩き続けて数時間。

 空を見ると陽が傾き茜色となっていた。


 山々の間から夕陽が顔を見せている。


 近くには小川が流れており今日はここで野営をすることにした。


「見張りはどうする?」


 レイドの言葉にリリスは答えた。


「魔法で結界を張る。それに魔物と獣避けの結界にもなってるから、よほど強い魔物とかではないと破れないから安心して寝れる」

「そうか」

「レイド、私はこれでも四天王の一人。ネクロマンサーと言えど結界くらいは張れる」

「それはすまなかった。なら守りは任せる」

「ん、それでいい」


 何故か満足そうな表情をするリリスに、疑問符を浮かべるレイドであった。


 その晩、リリスから魔法について色々と詳しく聞かされた。

 レイドはこう見えても元は勇者だ。ある程度の基礎などは知っているつもりだし、性質だって知っている。


 だがリリスからはさらに詳しく教えてもらえた。

 それと同時にリリスが得意とする『死霊魔術』の事を聞いた。


「リリスの使う死霊魔術とはどういったものなんだ? 一度しか戦ったことがないから良くわからない」

「なら教える」


 リリスは教えてくれた。


 死霊魔術とはまたの名を『死霊魔法』という。

 その名の通り死体を操る魔法の事だ。

 だからリリスは『ネクロマンサー』と言われている。


 死霊魔術。それは『死体』と『霊』を操るといったもの。

 供給する魔力量と操る魔物や獣の強さに応じてその強さは異なる。


 例えば強さが1の魔物に供給する魔力を10与えたとする。そうすればその魔物の強さは10倍となるといったものだ。

 リリスは生まれた時から魔力の量が多く、死霊魔術の適正が高かったことからそれを極め四天王の座に着いた。


 次に霊の場合だがこれには色々ある。

 霊と一括りに言っているが、霊にも種類がある。


 怨霊や精霊などだ。

 怨霊はレイドにも理解できだが精霊は理解が出来なかった。


「精霊は神聖な者だろ? 死霊魔術では使役出来ないだろ?」


 レイドの質問は最もな意見であった。


「違う。使役するのは『邪精霊』と『闇の精霊』」

「そうか、なるほどな。理解が出来た」

「ん、それで――」


 邪精霊と闇の精霊もまた性質が違うらしい。

 そこから色々と話を聞いた。


 そうして死霊魔術について聞き終えたレイドと説明を終えたリリスの二名は眠りについたのであった。





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