第23話:暗黒山脈へ

 収納魔法を無事に習得したレイドはその晩、フランに見せてやった。

 すると返ってきた反応はこうだ。


「リリスと二人きりでだとっ!?」

「ん? ああ、そうだが?」

「レイド、リリスとは何も無かったのだろうな?」


 言っている意味が理解できたレイドはフランの頭を撫でながら答えた。


「あると思うか?」

「うっ……す、すまない……私がバカだった」

「気にするな」

「……うむ」


 そのままレイドはフランのプリッとしたピンク色の小さな唇にそっと口づけをした。

 するとフランが突然を舌を絡めてくるので、それに応えるようにレイドも舌を絡める。


「んあっ……んっ……♡」


 フランから甘い喘ぐ声が聞こえてくる。

 数秒あるいは数分だろう長い長いキスが終わり互いが口を離すと唾液の糸を引いた。


 息がかかる距離で見つめ合う。

 フランの目はトロンとしており衣服も乱れている。


「正直私も付いて行きたい……」

「知ってる」

「レイドと離れたくない」

「俺もフランと離れたくない」


 再び二人はキスをし――割愛。


 疲れ果てた二人はそのまま眠りに落ちるのだった。



 ――出発当日。

 レイドとリリスは玉座の間にいた。

 理由はお察しの通り――


「いいかリリスよ。決してレイドに色目を使うのではないぞっ!」

「魔王様、何を言っているかわからない」


 リリスは頭に疑問符を浮かべ分からない様子でいる。

 まあ見た目がまだ幼いからなのか、妥当な反応であった。


 事実リリスはまだ幼い。

 魔族の寿命は長く、1000歳まで生きられるという。

 その分リリスは現在120歳程度あり、人間でいう14歳程だ。

 フランは人間の年でいうと、17歳くらいだ。


 なのに幼く見えるのはなぜなのだうか?


 そんなことはさておき、フランはリリスに強く言い放った。


「私のレイドに手を出すではないぞ! わかったな?!」

「ん、わかりました」


 絶対に分かっていない、そう思うフランだった。



「では気を付けて行くのだぞ?」

「ああ、早く帰ってくるようにする」

「ん、レイドの言う通り」

「うむ」


 こうして二人は玉座の間を後にして魔王城を後にした。

 すると途中でイリーナとすれ違った。


「あら、リリスとレイドじゃない」

「イリーナ」

「どこに行くの?」

「暗黒山脈」

「――はぁぁぁぁっ!?」


 その場所を聞いた瞬間にイリーナは驚きの声を上げた。

 イリーナの反応は普通であった。


 すぐにレイドの顔を見るイリーナ。その顔は「それは本当なの?!」と言っている表情であった。

 だからレイドは答えた。


「ああ、これから出て行くところだ」

「なんでそんなところに……」

「武器が欲しくてな。丁度ほしい素材が暗黒山脈にあるみたいだ」

「もしかしてだが、その素材って……」

「暗黒龍王アルミラースってやつだ。良い鱗を持っているみたいでな。これから行って少し頂いて来る」


 ポカーンと口を開けて絶句しているイリーナ。

 少しして我を取り戻したイリーナは慌てて止めてくる。


「か、考えてみろ! 最も神に近しいとも言われるドラゴンだぞ! 魔王様ですら倒すことが出来ず逃げかえってきたという……考え直してみろ! レイド、貴様が死んだら魔王様に何とお伝えすれば……私達の首が飛ぶぞ……」


 早口でそんなことをいうイリーナだが、行くと決まっているので今さら「やっぱり止めた」とも言えない。

 最悪でも相打ちだとレイドは考えているからだ。


 もちろん、レイドは勝つ気満々であるが。


「そんなことは知らん。俺は必ず戻ると言ってある。心配は要らん」


 そんな言葉を残したレイドはリリスを連れて暗黒山脈へと向かったのであった。





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