第21話:レイド、武器を選ぶ
レイドはリリスと二人で暗黒山脈へと行くことになった。
正直一人でも良かったのだが、フランがどうしてもと言うので仕方なくだ。どうせ要らないと言ったところでフランが駄々をこねるのが目に見えていた。
結局レイドはなんだかんだでフランには甘いのだ。
それはレイド本人もわかってはいた。
似た者同士なのだろう。それが夫婦なのだから。
「……レイド、いつ出る?」
隣を歩くリリスがそう聞いて来た。
「ここから暗黒山脈までどれくらいかかる?」
レイドは場所を知っていてもどれくらいの時間が掛かるかは知らないのだ。
「暗黒山脈までは徒歩で二週間、馬車で一週間かかる。飛行の魔法を使える者なら馬車より少し早く着くと思う」
「そうか。リリスは何で行った方が良いと思う?」
少し思案した後、リリスは口を開く。
「徒歩の方が安全。暗黒山脈の麓までは安全だけど、そこから山頂に向かうに連れて魔物が強くなる」
「そうか。なら徒歩で行くとしようか」
「ん、それがいい」
「出発は明後日の朝だ。それまでに準備しておく」
「わかった」
途中でリリスと解散したレイドは次の場所へと向かった。
向かった場所は……
「バルザーク」
バルザークがいる軍の訓練場であった。
レイドの声に反応して不機嫌そうに振り向くバルザーク。
「……なんだレイド?」
「やけに不機嫌そうじゃないか。何かあったか?」
「お前の顔を見るとこうだよ」
「それは悪かったな」
「ふんっ、それで何の用だ?」
レイドがここに来たのにはある要件があったからだ。
なんせ同じような戦闘をするバルザークに頼み事があったからである。
その頼み事とは――
「丈夫な大剣が欲しい」
「大剣だぁ?」
「ああ。明後日に暗黒山脈まで行くことになった」
「暗黒山脈までか⁉︎ どうして突然そんな所に――まさか!」
バルザークはレイドが何の目的で行くか予想が付いていた。
「倒せるのか?」
「わからない。ただ素材を集めに行くだけだ。そのための戦う武器が無いんだ」
「……そうか。こっちに来い」
そう言ってバルザークはおもむろに歩き出しとある場所へと向かった。
レイドには向かっている場所がどこなのか知らない。
少しして目の前のとある建物の前に立ち止まったバルザークは、その扉を開けながら口を開いた。
「ここから好きなのを持っていけ」
建物の中は沢山の武器が並んでいた。
多種多様で変わった武器までもがある。
「俺は行くぞ。決めたら扉は閉めておけよ」
「ああ、助かる」
「ふんっ」
バルザークはそのまま去ってしまった。
レイドは歩を進め中の武器を一点一点確認していく。
好きな物を持っていけと言っていたが、中にはボロボロの物から魔剣クラスまで存在していた。
ゆっくりと物色していき次に大剣を見る。
レイドの背丈を越えるほどの大剣がずらりと並んでいた。
この中から選ぶとなると骨が折れそうだが、自分の命を預ける大切な武器だ。ゆっくり見ていくとしよう。
武器を物色すること数十分。
レイドはとある大剣の前で立ち止まった。
派手さは無く、シンプルな全体が黒い大剣だ。
手に持ち魔力を流し強化してみるも、いくら流しても限界を知らないように見えた。
レイドは仮面越しに笑みを浮かべた。
「これにしよう」
この大剣なら自分に付いてこれると思った。
暗黒山脈の支配者、煉獄龍アルミラースと戦えそうだ。
こうしてレイドは大剣を携え武器庫を出るのであった。
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