身分階級の雑な設定
主に中世ヨーロッパを基とした世界の作品に多いが、貴族の身分階級をしっかり決めないまま名前の響きだけで割り振っている作品が見受けられる。
いくつかあるが、一番違和感を感じるのは公爵の扱いについてだ。
公爵位は大きく分けて二つ種類があり、王族や王族から臣籍降下した家のものが持つ王族公爵位と、臣民の特別な功績に対して王家または国家から送られる臣民公爵位がある。
しかしいくつかの作品において、公爵であるにもかかわらず王族とも血の繋がりがなく、先祖も今の代も功績を上げている描写または説明がない場合がある。その場合、その公爵家がその世界において王家に連なる家なのか、代々続く英雄の家なのか、新興貴族で注目を浴びる英雄の家なのかが分からず、物語における役割が読み取れないこととなる。
読んでいく中で、かつては領地を栄えさせ〜などの表現で補足されるのであればまだ公爵位を得た理由づけがなされている為、関係性を読み取ることが可能になるが、公爵位がどの公爵位なのかを示す内容がない場合一部の読者には王族として読んだらいいのか臣民公爵として読んだらいいのかもやもやを抱えることになる。
他に違和感を感じる身分階級の扱いとして、従属爵位を扱う作品が少ないという点がある。
先の公爵位にも関連するが、宮中伯もしくは辺境伯よりも上の貴族、つまりは上位貴族にはその家の爵位よりも下の貴族の位を持っていることが一般的だ。
例とするなら、家が公爵家で、従属爵位として子爵と男爵を持っている家があるとする。この場合嫡男もしくは跡継ぎと指名されているものが上から二番目の爵位である子爵を儀礼称号として持つことになる。
このように、上位貴族がその貴族位のみを持つことはあまり一般的ではないが、ほとんどの作品において嫡男は公爵子息や辺境伯子息などと書かれており、従属爵位を扱う作品は少数だ。また、公爵家に限るが、当主の敬称は〜卿ではなく〜閣下となる。それに加えて公爵家の子息は〜卿、子女はレディ〜と敬称をつけるのが一般的だ。
これらの呼び方を混同している作品が多く、特によく見るのは公爵位ではないのにもかかわらず〜閣下と呼ばれている場面だ。軍属であり、将クラスの階級を持っていれば話は別だが、そうでないなら付けるべきではない。
1回目の異なりかなり細かい話になったが、身分をただ字面だけで偉いだろうと付けているように感じる作品を目にすることが多くなって来ている。作品内において細かく説明する必要はないが、あくまでも基本は抑えつつ、特に公爵位の扱いについては気をつけて扱ってもらいたいものだと思う。
王族なのか臣民公爵なのかはとても大きな違いであり、物語内の人々の関係性に大きく影響を与える部分であるから、しっかりしているかどうかで読み手の理解度にもつながるだろう。
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