第9話 「夜明けと分母」


家の近くにある公園のブランコで一人、夜空を眺めている。

”頑張る”と決心したが、これから何をしたら良いのかわからない。


両親の会話の中で自分が死んだ原因が理解できた。

想像通り ”飲みすぎ” が原因みたいだ。


「そんなことで死ぬなんて馬鹿だな。。。俺。。。」


当たり前にできていたことが如何に大切だったかを

今になって理解できる。


家を出てから何度も何度も、

”消える”

ということが心の中に浮かぶ。


もう何も考えたくない。


誰にも会いたくない。


ここにずっといて、

左手の時計が1周するまで待っていようと思った時、


「よっ青春してるね。少年。」


「姉さん、、、」


ショート姉さんは一方的に自分のことを色々と話してくれた。たまたま家の付近にある公園に来たら、自分を見つけたみたいだ。姉さんの目が腫れている。今はその要因がなんとなく想像できる。姉さんに先程の出来事を話してみた。


「そっか。ネグセちゃんも色々あったんだね。」


「で、これからどうするの?ここにいるの?」


”わからない”

色々と、もうどうでも良いのかもしれない。


「一つだけ気づいたことがあるの。ネグセちゃんも考えてたと思うけど、ここに来る人は後悔があってここに来てるって。」


それは色々な人の話を聞いて、自分もそのように思っている。


「でも、それ、私は間違ってると思うんだ。」


「多分ね。新しいスタートをするための準備をする場だと思うんだよね。ただの言い換えかもしれないけどね。」


姉さんは続けて言った。


「みんな、消える、消えるばかり気にしてるけど、それはあちらの世界でも一緒でしょ。いつ死ぬかなんてわからないし、むしろこちらの世界のほうが選択ができる訳だからまだマシかもね。」


「ネグセちゃんも後悔ばかりしてないで前に進まないと。」


姉さんは笑って右手を見せる。カウントは(1/5)。


「このカウントは手伝う数じゃなくて、自分のこれから起きる”運命”の数だと私は思ってるの。つまり分母を増やせば増やすほど、あちらに戻った時にたくさんのイベントが起こる。」


「こちらの世界で”運命の分母”を増やして、向こうに戻ってから自分で分子の方もするって感じよ。」


姉さんの言うことが正しいかどうかはわからないが、

前向きな気持ちになれたことは確かだ。


気がつくと、日が昇り始めていた。


こちらの世界は

”新しいスタートの準備をする場所”


「姉さん本当にありがとうございます。両親にも”頑張ります”って言ってここに来たんですけど、もう何も考えずに消えようとしていました。」


左手の時計はまだ半周ぐらいは残っている。2〜3日ぐらいはあるだろう。自分もカウントの”分母”を増やす旅をすることに決めた。


”モヒ”や”ロング”はこのことをバカにしてくるかもしれないが、でもそれでいいと思う。


「じゃあ行くよ!ネグセちゃん。」


「もう”姉さん”じゃなくて、”師匠”ですね。」

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夜は黙っちょってもくる はんがくせーるちゅう @seeeruchu

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