第7話「消えるという選択」

「なるほど。互いに干渉するとカウントは共に増える。」


「お手柄だ。ネグセ!」


「モヒとしばらく共に行動していましたが、このことには気が付きませんでした。」


「まぁ一緒に干渉し合うなんて、男同士だと気持ちわりーしな。」


”モヒ”と”ロング”と待ち合わせ場所で合流した。

病院を出てから”ショート”姉さんは一言もしゃべらず何かを考えているようだ。


「このことは誰にも言わねぇし、あまり使うな。感づかれるからな。」


「でもみんなが知れば、今より簡単に達成することができると思うのですが、、、」


「色々とあるんですよ。ネグセさんも気づいている通り、私たちの達成しなければならないカウントは(10/10)に増えています。」


「まるで早く”消えろ”と言われているみてぇだ。」


「つまり、みなが平等に達成していける訳ではないんです。」


この前の公園での出来事のように、この世界にはあまり協力し合うということはないのかもしれない。優しい人間は損をするというが、こちらの世界ではそれが顕著に現れている。


「・・・私はやっぱり早くこの世界から出ていくわ。」


彼氏と会って、姉さんの気持ちに変化があると思っていたが、違ったらしい。


「ここにあなたたちみたいに残っても、寂しくなるだけ。」


「いいんじゃねぇか。早く消えて猫でも犬でもなればいいだろ。」


「じゃあ私は家族に挨拶してくるわ。」


「そうですか。可能であれば、その左手の時計が1周するまでには合流していただけると助かります。」


「消える瞬間までも何か見つけたいのね。ロンゲもかなり冷酷ね。。。」


姉さんは家族に会いに行った。追いかけようと思ったが、自身のカウントが気になっている。情けないが、消えるのが怖いのかもしれない。


”消える”という選択肢をするとどうなるのであろうか。元の世界に戻れるのだろうか。”モヒ”たちの言う通りこの世界に居座り続けると、カウントの数が増加する。冗談で言っていたが、確かに早く消えろということを言われているのかもしれない。


やはりあちらの世界の”後悔”みたいなものが関係しているのか?

死ぬ寸前の記憶は思い出せないが、実は住んでいた場所や家族のことは覚えている。それすらも怖くて向き合うことができていなかった。過去に向き合うと何かが変わるかもしれない。こっちに来たばかりの姉さんを見て思った。


「少し僕も出てきます。」


「あ〜、別に一緒に行動する必要はもうねぇぞ。あのショートも消える直前まで帰ってこねぇだろう。」


「またあの公園で会いましょう。」


「わかりました。」

姉さんの言う通り、2人は本当に冷たいと感じながら、その場を後にした。


”強くならなくては・・・”と何度も唱えながら、記憶にある場所へ向かった。

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