第3話 「初めてのカウント」


”黄色”のオーラを放っている女性は、夕方から尾行を開始したが、夜になっても”赤色”になることはなく、自身のマンションの部屋に入っていった。”黄色”のオーラはその日の内に”運命”が発生する。女性の家に勝手にお邪魔することになってしまうが、消えることを避けるためにも、この機会を逃す訳にはいかない。部屋の入口までついて行き、少し悩んだ末、


「申し訳ないです。お邪魔します。」

もちろん女性には聞こえないが、自然と言葉が出ていた。


部屋に入ってみると、女性は尾行を開始した時と変わらない会社の制服だろうか、キッチリした服装のままビールを飲んでいる。ベランダに出る窓が空いており、そこで晩酌でもするのであろう。


しばらくすると女性は紙とペンを取り出し、何かを書き始めたその瞬間、

女性は”赤色”のオーラを放ち始めた。


”赤色”のオーラと向き合うのは初めてのことだ。”1時間以内”に何かが起こり、それをお手伝いする。

ゲームのようにお手伝いをする”運命”が何かを表示されるのかと思っていたが、どうやらそうではない。


「自分で探すのか!?」


カウントを増やす機会を目前にして、ハゲのおっちゃんにまだ聞くことがあったことを後悔する。


とっさに自分の取った行動は、女性に近づくことであった。部屋に入ってから距離を取った場所で待機していたが、そのようなことをしている場合ではない。近づくと、ふと女性が書いている紙に目がいった。

そこにはたった2つの言葉が書かれていた。


”ありがとう”


”さようなら”


おっちゃんに聞かなかったことに加えて、ここに来たことも後悔した。女性は恐らく”自殺”を考えている。

”補助する運命”か

”助ける運命”なのか。

いやまったく”別の運命”の可能性もある。


女性は紙を机の上に置き、ベランダの手すりの上に立ち始めている。

何をすべきかわからない以上、助ける以外の手段は思いつかない。


「えっ!うわっっ!」

あちらの世界に干渉して、女性の背中をベランダ側に引張った。


女性は何が起きたのか理解しておらず、呆然としていたが、

すぐに泣きながら部屋に置いていた携帯を取り出し、誰かに連絡をしているようだ。

「お母さん、ごめんなさい。ごめんなさい。。。」


幸いなことにその連絡をしてからすぐに母親らしき人物が現れ、女性を連れて部屋を出ていった。

右手のカウントは(1/3)となっている。

「成功したのか?」

初めてのカウントを得たことよりも、

このような”運命”をあと2回も達成しないといけないと先が思いやられる。


まだまだわからないことが多い。”赤色”になったとしても、何をすべきかわからなかった。

今回は偶然に成功し、間違った場合カウントはされなかったのであろうか。


別に休む必要がない身体だが、今日はどこかで休もう。

「お邪魔しました。」

挨拶をして女性の部屋をあとにした。

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