第26話 アラタVSデスサイズ②
デスサイズもアラタが自身の能力を熟知している事を知り感心している様子だ。その上で再び死神の鎌をアラタに向ける。
『若いのに大した知識だな。我々闇の眷属は禁忌の存在として一般的に能力はあまり知られてはいないのだが――しかし、だからこそ面白い。次の我の攻撃をどのようにいなす?』
戦意を
「まだやるつもりか。闇の眷属っていうのは案外義理堅いよな。俺はそういうのは嫌いじゃないよ。味方になった時の信頼性が上がるからね」
『言うではないか! そこまで言うからには、貴様の力を我に示して見せよ!』
デスサイズは突撃し接近戦を試みる。アラタもまた正面から死神の鎌の斬撃をバルザークで受けきった。
二つの刃が激しくぶつかり合い甲高い金属音が暗い森に響き渡る。
『見事! だが、まだまだ!!』
そこから、デスサイズの怒涛のラッシュが開始された。巨大な鎌を目にも留まらないスピードで振り回す。
一方、アラタはその一撃一撃をバルザークで丁寧に受け流していく。その表情は真剣ながらも余裕があった。
デスサイズがアラタの戦いの姿勢に既視感を覚え、一瞬攻撃の手が弱まった。それを彼は見逃さなかった。
「そこだっ!
アラタはバルザークに伝達させている魔力を爆発的に高め、刀身から純粋破壊の魔力の象徴である白い光が放たれる。
白光の斬撃は死神の鎌の刀身を激しい金属音を伴って真っ二つに破壊した。
折れた刃の先端がゴブリンキングの足元に突き刺さり「ヒィッ!」と短い悲鳴を上げる。
デスサイズは自身の鎌を折った白光の剣をまじまじと見つめていた。
『そうか……噂では復活したと聞いていたが貴様がそうだったのか。久しいな魔王グラン。かつて破壊神ベルゼルファーとの戦いで我らを勝利に導いたその魔力と白い光。――実に懐かしい』
デスサイズは赤い光の目を細めながら昔を懐かしむように語った。
アラタは指先で頬をぽりぽり掻きながら笑っている。
「実際には限りなく負けに近い相討ちだったけどね。だからこそ今度は勝つさ。そのために以前のようにお前の力も当てにしてるよ、デスサイズ。確かセレーネと契約したんだろ?」
アラタがセレーネの名を出すとデスサイズは身体をピクリと震わせるのであった。その骸骨の顔からどことなく嬉しそうな雰囲気が伝わってくる。
『ああ、セレーネ〝様〟か。彼女は闇の魔術の使い手として歴代の中でもトップクラスの魔闘士だ。それに我を召喚し手に取った時のあのたおやかで白魚のような手――我にとっては至福の一時なのだよ』
セレーネの話をする時のデスサイズは遠い目をしながら幸福感に包まれていた。そこには闇の上級眷属としての威厳はなく恋愛を語る詩人のようだった。
「お前、セレーネを〝様〟付けで呼んでるのか……ま、まぁいいや。セレーネなら、デスサイズの力を百パーセント引き出せるからね。強力な敵が相手の時は闇魔術において主力になる。――頼りにしてるよ。というわけで、この勝負は俺の勝ちってことで。あいつは俺の好きにさせてもらうけどいいかな?」
アラタがゴブリンキングを睨むとデスサイズも異論は挟まなかった。
『敗者である我には勝者の道を妨げる権限はない。このまま闇の世界に帰るのみ――さらばだ』
デスサイズはそう言い残すと、黒い煙となり目の前から消えて行った。
最後の手段であった闇の上級眷属が消えたことでゴブリンキングからは歪んだ笑みは完全に消え失せていた。
「ソ、ソンナ馬鹿ナ! デスサイズガ負ケルナンテ! クソッ、モウ一度出テ来イ! ――――ナゼ出テコナインダ!?」
ゴブリンキングは再度デスサイズを召喚しようとするが、反応はなく呼びかけに応じようとはしなかった。
アラタはバルザークに魔力を伝わらせながらゴブリンキング目指して真っすぐに近付きながら言い放つ。
「もうデスサイズは出てこないよ。お前の残りの魔力ではあいつを呼び出す事は不可能だからな。――さて、ゴブリンキング覚悟しろ。千人近くの魔物を先導し騒動を起こしたその罪、そしてお前の口車に乗せられて戦い死んでいった者たちの命に対する責任――お前の命であがなってもらうぞ!」
アラタの目と声色からは一切の同情を買うことは不可能だと察したゴブリンキングは目くらましと言わんばかりに残りの魔力で周囲に黒い霧を発生させた。
『コノ隙ニ――!』
脱兎の如く逃げ出した小鬼のすぐ後ろでは、黒い霧から抜け出てきた黒衣の剣士が白く輝く剣を振りかぶっていた。
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