第一部ストーリー編②

第四章 風の精霊シルフと風の記憶

 次に私達が向かったのは、風の精霊シルフの祠があるバルゴ風穴でした。シルフは昔から自身のキャラクター設定がブレブレで、現在はアラタ様のいた世界の『コギャル』という種族の恰好を真似ているのですがアラタ様いわく、彼女のコギャル姿は部分的に世代がずれているらしいです。

 チョベリバがどうとかルーズソックスがどうとか仰っていましたが、私にはチンプンカンプンでした。


 バルゴ風穴内では、時々突風が吹き荒れていてアラタ様とトリーシャが途中で吹き飛ばされてしまい私達は捜索に乗り出しました。

 その間アラタ様達は、この地でシルフを守る魔物グリフォンと遭遇し倒したそうです。

 合流した二人が仲良くなっていたので、良かったと言えば良いのですがちょっと面白くないと思う自分がいました。

 まだまだ魔王専属メイドとして未熟であると実感した瞬間でした。


 その後シルフのもとへ到着した私達は、〝自分の未来の可能性〟を映し出すという風の記憶を見ることになります。今回はアラタ様の未来の可能性を見ることとなりました。

 最初は黒衣のローブをまとい漆黒の魔剣〝グランソラス〟を所持するアラタ様が魔物の群れを無双するビジョンを閲覧し、次は魔剣の機能である〝魔装〟を纏い黒騎士となった姿を拝見しました。

 魔装状態のアラタ様と戦っていたのは、後に第八章で戦うアサシンのようです。え? 風の記憶を見た後、その記憶をシルフに消されたはずなのにどうして覚えているのか……ですか? 女神である私には精霊の力は基本効かないのです。

 それはシルフ自身も承知の上でしたし、私も決して内容を他言するつもりはありませんので問題はないかと思います。

 風の記憶内のアラタ様は、魔王グラン時代の記憶は甦ってはいないようでした。

 その事からも、現在自分の各転生時の記憶を所持しているアラタ様は、風の記憶のヴィジョンとは別の未来へと進んでいるという事になりますね。

 風の記憶で見た場面がどのように変化するのか、今から楽しみです。

 最終的にシルフはアラタ様の可能性にかけたようです。後の解呪の儀の時も頑張ってくれましたし、根はとても優しい子なんですよ。


第五章 二頭のブラックドラゴン

 バルゴ風穴を出た後、私達は宿場町ハンスで長旅の疲れを癒していました。その夜アラタ様は聖山アポロ以降欠かさずに行っている訓練に励んでおり、アラタ様とより親密な関係を築きたいと思っていたトリーシャが、汗拭き用のタオルを持って訓練の様子を見ていたようです。

 この正攻法はアラタ様の心にガツンと来たようですが、直後トリーシャの性癖である臭いフェチが暴走してしまうという結果に。

 

 神魔戦争時代に魔王軍に所属し活躍したブラックドラゴンと会うために向かったアグノス山でアラタ様とトリーシャが仲直りできて良かったです。

 安堵した直後、私達はアグノス山の外部から飛来したブラックドラゴンの奇襲を受けました。

 この黒竜は私達を待っているのとは別の個体であり、危険な状況に陥った私達を助けてくれたのは、この山で私達を待っていた黒竜でした。

 この二頭の黒竜は実の姉妹であり、姉であるセレーネは魔王軍側、妹のブネ(本名ルシール)はセラフィム側という敵対関係になっていました。

 セレーネと私達は協力して何とかブネを撃退しましたが、寿命が近づいていたセレーネは自らの心臓部であるドラゴンオーブを新しい魔王であるアラタ様に託し息絶えるつもりだったようです。

 

 当初、ドラゴンオーブの力により自らの肉体を武器に変化させ、アラタ様の力になろうと考えていたセレーネでしたが、アラタ様は彼女の本当の願いを叶えるようにドラゴンオーブに祈りました。

 その結果、セレーネは二十歳くらいの人間の女性へと転生し、再び魔王軍に参入したのです。

 人間に転生した直後のセレーネは一糸纏わぬ姿になっており、その驚異的なナイスバディをアラタ様の目の前で盛大にさらけ出しました。

 天然お姉さんにより起こされたラッキースケベイベント……大変勉強になりました。

 それまで私がアラタ様に行ってきた、胸の谷間を強調して見せたり、スカートの中をわざと見せたりというような行為は、彼女の前では児戯程度の内容であったと思い知らされたのです。


第六章 魔王軍レベルアップ

 アグノス山を下山して二日後、宿場町エトワールに到着した私達はひとまずセレーネの服を購入するためショッピングに出かけることに。

 魔王軍の男性陣は女性の買いには付き合いたくはないようで、アラタ様を生贄として私達に差し出し、自分達はそそくさと逃げました。


 最初はドキドキしながら私達の買い物に付き合っていたアラタ様も、最後は疲労困憊だったようです。

 でも、この時のショッピングは本当に楽しかった。トリーシャとセレーネも私と同じ気持ちだったようで大変満足した表情をしていました。

 そういう事もあり、アラタ様の頬にキスをしてしまったのですが……私にもこのようなピュアな一面があったのですね。我ながら以外です。


 翌日、セレーネの魔闘士としての適性を調べるために、ギルド協会エトワール支部を訪問した私達は、結局全員の適性を調べていただきました。

 この時セレーネは闇属性の魔術師に適性があり、その能力も非常に高くセスがすごく喜んでいたのが印象に残っています。

 アラタ様の時は測定器型のスフィアが壊れて、一時は弁償をどのようにして払おうかと言うことになりましたが、対応していただいた男性ギルド職員の方のおかげで問題なく済んだだけでなく、修練場の提供と格安で宿に泊まれるように取り計らっていただくなど、至れり尽くせりの扱いをしていただきました。

 もし、このギルド職員の方のご助力がなければ、私達は十分な訓練ができず実力不足により次のシェスタ城塞都市で全滅していた可能性が高かったと思います。


 訓練中セレーネは好意をアラタ様にストレートに伝えており、アラタ様と魔王軍女性陣三名による四角関係が成立したのですが、この時私が考えていたのはたぶんアラタ様なら女性三人相手であれば余裕でハーレム関係を築けるだろうということでした。

 後日、私の予想が証明され一件落着になります。「英雄色を好む」という言葉がありますが、魔王であればその傾向はより強いようです。


 次回でストーリー編は終了となります。ではまた後ほど。

 

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