第197話 朝ちゅんちゅん②
(どうなる? どうなっちゃう、俺? 変態と呼ばれてぶたれる? それとも、闇と水魔術のコラボでぼっこぼこにされる? ひぃー! 何でこんな事になったんだよー!? ……気の利いた一言でも言えば場が和むかなぁー?)
「お、おはよう2人とも。きょ、今日はいい天気みたいだね、はははははははは!」
緊張のためか、口を開いた瞬間に舌を噛み、不自然極まりない挨拶と笑い声が静まり返った部屋に木霊する。初めてアンジェと会話した時と大差のない内容であった。
(いやぁああああああああ!! 失敗したー! 和むどころか、これ、凍りついた! 空気が凍りついたよ!! やっちゃっとぅあああああああああああああ!!)
アラタが1人後悔する中、アンジェとセレーネはというと、2人とも顔を赤らめながら上目遣いで困惑している少年の顔を覗き込み、消え入りそうな声で「おはようございます」とだけ言った。
その破壊力は凄まじく、2人の萌え攻撃はアラタの心臓をたやすく貫通し、少年は自分の胸を押さえながら
「お、おはようアンジェ、セレーネ。起きた直後で悪いんだけど、この状況――」
2人に抹殺されずに済んだアラタが、状況を整理するため話しかけようとした瞬間、仰向けになっている自分の身体の上に何かが乗っている事に気が付いた。
両隣の存在に気を取られていたのと、上に乗っているものが比較的軽かったために全然気が付かなかったのである。だが、一度気が付くと確信できる。そこには何かがいる。
アラタは昔ホラー映画で見た1シーンを思い出していた。眠っている主人公の足側から顔目がけて移動する恐怖の対象を。
「ごくりっ!」
恐怖で生唾を飲み込むアラタに対し、それは彼の腹部から下肢の辺りに乗っていたが、今まさに行動を開始し徐々に上方を目指しはい上がって来る。
同時に先程足裏を撫でた筆のような物が、何度も彼の身体をくすぐり始めていた。そのふわふわとした感触に心地よさを感じ始めていた時、ついにそれは姿を現した。
「ぷはぁー! ちょっと苦しかったわ! ああー、空気おいしー。……あっ、マスター、おはよう」
美しい金髪のケモミミ娘が現れた。例に違わず彼女も身体に何も身に着けておらず、その細身ながら適度に引き締まった肢体や豊かな双丘がアラタの目の前で、これでもか! という具合に露わになる。
目の前も両隣も肌色成分は100パーセント、四面楚歌ならぬ三面美女、左門の黒竜右門の冥土上門の狐、少年のエロ知識を軽く凌駕する扇情的な光景が、視覚を通じてダイレクトに彼の脳に叩き込まれた。
「す……凄すぎ……!!」
アラタの脳はこれらの情報に対して秩序を持って処理しきれずショートし、本人は盛大に鼻血を出して気を失うのであった。
「! あ、アラタ様っ!?」
「マスター!? ち、血が出てる! どうして? どこから攻撃があったの!?」
「でもなんだか幸せそうな表情をしているわねー」
3人の女性の声を聞きながら、少年の意識は遠のいていく。次に彼が意識を取り戻したのは、太陽が一番高い位置に上がった頃であった。
「ふじさん!!」
「うおっ! なんだ、なんだ!?」
急に大声を上げながら覚醒したアラタ。彼の側にいたロックが、不意を突かれて驚いていた。
朝に目を覚ましたアラタが出血して昏倒したという知らせを受けて、魔王軍の面々が彼が休んでいる部屋に顔を出していたのだ。
現在セスとロックが、この部屋で待機をしていた。
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