最終章 魔王覚醒
第196話 朝ちゅんちゅん①
窓の外では数羽の小鳥がちゅんちゅん鳴いており、朝の到来を告げている。窓のカーテンの隙間から光が差し込み、丁度アラタの顔へと当たる。
朝日の眩しさを感じながら、眠気と倦怠感に打ち勝ち少年はゆっくりと重い
「ここは……どこだ? 俺……生きてる……のか?」
まどろんだ頭で現在の自分の状況を整理する。どうやら、今ベッドで寝ているようだ。程よい反発力で実に寝心地がよく、再び睡魔が襲って来る。
ほどよい眠気と戦いながら、ふと顔を横に向けると、そこには銀色の髪に白磁の肌の少女がすうすうと寝息を立てていた。髪と同じ色のまつ毛が時折ぴくぴく動き、呼吸と共に彼女の生存を知らせている。
「っ!!!!」
驚きで声を上げてしまいそうになるも、すぐ隣で熟睡する少女を起こしてしまうと思い止まる。
(よかった……アンジェが生きてる! 夢じゃなかったんだ!)
アサシンとの戦いに終止符が打たれる直前、意識が
そこから先は記憶が断片的になっており、もしかしたらこれらは自分の夢の中の出来事だったのではないかと思ってしまった。
だが、こうして意識が覚醒している状態で目の前にアンジェが生きている事実を目の当たりにして、アラタは安堵や喜びと言った感情が一気に湧き上がって来るのをひしひしと感じていた。
幸福感により心が満たされる一方、少し冷静に考えてみると、この状況がとんでもない事に気が付く。
アンジェが自分のすぐ隣、それこそ自分の右手が彼女の身体に触れている状態で横になっているのだ。
そして、右手から伝わって来る情報を分析してみると、このような結果が分かってくる。
(――――服、着てなくね?)
自分は勿論彼女もまた、衣類を着用しておらずダイレクトに互いの生身の肌が密着しているのだ。
(当たってる……なんか右腕にすごい柔らかいのが当たってる!! こんな柔らかいのは俺にはない……って事はつまり女性の胸部装甲的なあれですか!?)
目が覚めた直後の人生未経験イベントに対し、思春期少年の頭の中は一瞬でオーバーヒートした。
それでも、この状況を何とか整理しようと、とりあえずアンジェと逆方向に視線を向ける――が、その先には黒髪美人の女性がいた。左目の所に泣きぼくろがあり、彼女の色気を一層引き立たせている。
彼女もまたアラタの右側で寝ている少女と同様に、一糸まとわぬ姿で寝息を立てている。
「うう……ん、……ん……んん」
(寝ているのになんつー色気! それに、うわー、めちゃくちゃやーらかい! すごい!……って違う!! どうしてセレーネがこんな所にこんな姿でいるんだ! でも、やーらかい……!)
前門の虎後門の狼ならぬ、左門の黒竜右門の冥土。相手が1人でも大パニックであったのに、それが2人になった事で少年の思考は熱暴走を通り越し、機能停止に追い込まれた。
ただ、停止と言っても原因追求に対する思考が止まったのみで、左右の腕から伝わる幸せな感覚を全力で享受しようと、身体の五感のうち触覚センサーを最大にする。
すると、今度は足の裏を筆のような物でくすぐられる感覚が彼を襲う。
「ふっふふ! ひゃははは!!」
不意打ちで受けたくすぐり攻撃により、思わず口から声が出てしまい、左右で眠っていた美女2人がゆっくりと瞼を上げ、気だるげにあくびをする。
「んん……あ……」
「ふぁ……は……ん」
焦点が定まらない2人は目を
その間、アラタはというと両隣の女性がこの後どういう反応をするのか、死刑宣告を待つかのように息を殺して微動だにせず固まっていた。
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