第169話 勇者の怒りは炎となって①
ガミジンに視線を戻しスヴェンは魔力を全開に引き上げる。その身体は太陽のように高温の熱を周囲に放ち、接近してきたイビルプラントのツタを燃やしていく。
「触れてもいないのに、イビルプラントのツタを自然発火させた!? 予想以上の魔力……面白い!! 来なよ! スヴェン!!」
「乗ってやるよ、その挑発に!! その腐りきった性根もマナも跡形もなく燃やし尽くしてやる!!」
ガミジンはイビルプラントの頭部に移動し、スヴェンは仇敵目指して真っすぐに突撃していく。
接近する敵に対して獣と植物の
「シャーリー! 補助魔術をスヴェンに集中させて!」
「分かりました! 豊穣の女神の御手により救世の光を纏わん! プロテクション!」
シャーリーの〝プロテクション〟によりスヴェンの防御力が底上げされる。補助系魔術は対象が術者から離れる程効果が弱くなってしまうのが弱点であるが、魔術の対象を絞ることで効果範囲を広げる事ができる。
「ブレイズエッジ!!」
スヴェンの大剣に常時炎が灯り、その威力を向上させる。近づくツタを次々に切り裂くと同時に燃やしていく。
大剣による一撃は威力が高いが、通常の剣と比べて重く取り回しが悪い分攻撃速度が劣る。そのため、攻撃速度が求められるツタへの迎撃では一振りでなるべく多く破壊し、次の斬撃までは回避でやり過ごす。
スヴェンは怒りでその身を煮えたぎらせながらも、日々の訓練や戦いで染みついた戦闘方法を発揮し半獣半植物の怪物に近づいていく。
スヴェンが炎の剣で切り裂いたツタの断面は、炎が消えることなく燃え続け徐々にだが本体目指して歩みを進ませていた。
その間スヴェンはさらに炎の斬撃を重ねていき、彼に向かってくる木製の鞭は自然とその数を減らしていった。
「ちっ! あの炎の剣で切られた箇所は再生不可能か……やはり植物としての特性が強いイビルプラントでは、炎を得意とする敵には相性が悪いようだね……でも」
イビルプラントの頭頂部から戦いを見物するガミジンは、舌打ちをしながらも余裕の表情を崩さない。
むしろ思いの他健闘するスヴェンの戦いぶりに満足する余裕すら見せている。
「スヴェン、そこががら空きだよ」
炎の剣でツタを一蹴し回避行動に移ろうとしたスヴェンの足に1本のツタが絡まり、動きを鈍らせる。
直後、地中から数本のツタが現れ獲物目がけて飛び出す――が、それらがスヴェンに直撃する寸前に見えない壁に当たったように弾かれる。
標的に届かないままのけぞった触手たちは、勇者の放つ炎のオーラに焼かれ、のたうち回る。
思いがけない状況に一瞬余裕の表情を崩すガミジンであったが、すぐに見えない壁の正体が分かるとその術者に対し睨みを見せた。
「プロテクションか……しかし、あれだけの距離で高い効果が持続するなんて、中々の術者じゃないか……そう言えばプリーストのアンデッドはまだ作成した事がなかったっけ」
プロテクションの発動に集中し動きが取れないシャーリーを狙うように、周囲のアンデッドが押し寄せる。
その侵攻を遮るように、コーデリア達は得意の闘技や魔術で迎撃し敵の数を減らしていく。
しかし、敵が一定数減少する毎に新しいアンデッドが召喚され、戦いに終わりが見えない状況が続いていた。
敵がシェスタ内に侵入した直後から連戦が続いていたスヴェン達は体力、魔力共に底をつき始め、余裕の無い中での敵の増援は彼らの戦意を確実に削っていく。
現状を打破する最適解は、アンデッドの主であるガミジン本人を倒すこと。
怒りに燃えるスヴェンもそれを重々承知しており、目の前に立ちふさがる巨大なアンデッドとその主をまとめて叩き潰そうと気力を振り絞っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます